強さの代償
町では、基本的に公衆浴場を使う。
公衆浴場は町の入り口にあり、一番分かりやすい場所に建てられていた。
魔法を使う事ができるので、あっという間に火は焚けるし、男手が戻ったことで、窓や壁の簡易的な修理も施された。
湯は男女交代で入り、女が先に入ってから男が入るという風になっていた。
湯は、四十畳半もある広い浴槽。
浴槽の端では、髪を下ろした紗枝が膝を抱えていた。
「ごめんてば」
すぐ後ろで、ウェイが正座をして謝っている。
騎士の皆は、謝罪よりも紗枝の背中に釘付け。
というのも、女としてあり得ない体をしていたからだ。
「あたしが悪かったよ」
「……」
「ねえ。ごめん。ごめんね?」
背中を擦り、顔を覗きこむ。
すると、紗枝は拗ねてしまい、そっぽを向く。
「あれ、何やってんの?」
「ウェイさんが、紗枝の体をキモイって言ったから。拗ねてんの」
「あぁ……」
話していた騎士達は、満場一致で納得。
強さに関しては、本当に尊敬の念を抱く。
だが、女として憧れるかといえば、話は別。
「紗枝ちゃん。たぶん、モテないよね」
悪気はないが、パテーが正直に言った。
「脱いだ瞬間、男が逃げてくだろうね」
「ていうか、背中って、どうやったら、ああなるの?」
背筋を丸めているのに、肩甲骨がこれでもかというくらいに、輪郭を主張していた。それだけ発達しているのである。
男とも、女とも言えない特徴的な体。
満場一致で『気持ち悪い』というのが正直だが、何だかんだ言って皆は興味津々だった。
驚くのは初めだけ。
見ていると慣れてきて、騎士達の方から紗枝に寄っていく。
「いじけるなって」
「隊長も悪気あったわけじゃないんだから」
「そうそう」
紗枝は口を尖らせた。
「ふん」
何気なく後ろに目を向ければ、引き締まりながらも、たわわな乳房が湯船に浮かんでいる。肩や二の腕、腹や尻は、女としての魅力を遺憾なく発揮している。
対して、紗枝はどこまでも実戦向きの肉体。
見る者を圧倒するような威圧感だけ宿していた。
「ほら。背中流してあげるから」
「……いいです」
「んもぉ。いじけるなってば。隊長も手伝って」
「ええ。紗枝。立って。泣かないでって」
「泣いてないわ!」
強さと弱さは、ある意味で表裏一体だ。
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