ちょっとした成長

 刀の血を取るべく、握り手を一つ叩いた後、空を袈裟けさ斬りする。

 親指に峰を当てて、静かに納刀。


「あら?」


 まだ兵は町に残っていたはず。

 随分と遠くに離れてしまい、気だるげに町の方を向くと、離れていく影がいくつか見えた。


 馬の駆ける音だ。

 急いだ様子で、兵が三人ほど、町とは別方向に向かっている。


「あらら。逃げちゃった」


 砦へ報告しに行ったのだろう。

 遠ざかる人影をボーっと見つめた後、紗枝は腰に縛り付けていた小袖を着直す。


「んー、……何だか。毛唐を外敵としか見ていなかったけど。ちょっと興味湧いてきちゃったなぁ」


 大振りの剣ではあるが、速い。

 日ノ本と正反対で、肉を主に鍛える剣の文化。

 手の平には痺れるような痛みが残っており、紗枝は転がった首を見つめる。


「妖術は……厄介ね……」


 首を持つと、ポンプの折り曲げた膝にそっと乗せ、手を合わせるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る