ダーウィン町編

現在の王都

 ウー大陸の中部には、陥落したカイブ王国の王都があった。

 現在では、攻め入ったシュートラント大帝国の支配地となっており、男は労働力に回され、女のほとんどは娯楽として街中で辱められる様相が広がっていた。


 大帝国の様式に替えられた王宮内では、女は指定の服か全裸でなければ斬首される。

 男は強制的に局部を切り取られ、傷が治らない内に働かされ、地獄のような光景が広がっていた。


 信じられない事に、こんな有様で数年の時が経過していた。


 テラスでは、一人の男が優雅に紅茶を嗜んでいた。

 浅黒い肌をした男で、見た目からも荒い印象がある。

 角ばった髪に、青い絹の一張羅を着ており、体格は良くて、大柄だ。


 男の名は、ゲルード。

 カイブ王国を支配する外征軍を指揮する将軍である。


「リース。貴様は物覚えが悪いな」


 男の股座に顔を埋めている女がいた。


「舌を使うんだ。こう、やって」

「ん、ぐっ」


 リースと呼ばれた女は苦しげに呻き、一生懸命に奉仕をする。


「くくっ。良い眺めだ。貴様の父に見せてやりたかったわ。男のにおいに塗れたメスが、男の股に顔を埋めるなど。卑しい魔族に相応しい光景よ」


 ゲルードの表情には優越感が表れていた。


 口ぶりでは散々罵るが、リースは大陸一とうたっても差支えのない美貌の持ち主だ。

 白皙はくせきの肌は汗を掻くだけで、宝石のように輝く。

 肩まで伸びた金色の髪は、日に当たると一層ゲルードの好む黄金色に光沢を放った。


 涙に濡れた青い目は嗜虐心しぎゃくしんをそそらせ、豊満な肉体は何度抱いても飽きる事がなかった。


 せめてもの抵抗で、リースは睨むようにして上目遣いをした。

 目の奥には恐怖と嫌悪の入り混じった感情が宿っている。


「ふん。どうした? 口が止まってるぞ」


 ゲルードは髪を掴み、乱暴に頭を揺さぶる。


「人間を支配してきた報いだ。人間様に迷惑を掛けた分、子宮が壊れるまでご奉仕をしてもらわなくてはな。ハッハッハッハ!」


 悔し涙が目じりから溢れ、堪らずにリースは目を瞑った。

 いつも頭に浮かぶのは、大好きな弟の顔。

 せめて、弟だけは無事に生きていてほしかった。

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