好みの子

 深い眠りから徐々に意識が冷めていくと、小鳥のさえずりが聞こえた。


「う……」


 木漏れ日が瞼に当たり、紗枝は顔をしかめた。

 ゆっくりと瞼を持ち上げると、そこは木々の生い茂った森の中。


 視界にはこずえの揺れ動く影が見えた。

 そのせいで、日光が当たったり、隠れたりを繰り返している。


(わたし、……死んだのかな)


 背中が冷たかった。

 手足は動く。

 首を回し、横を向くと、今度は見覚えのない顔が見えた。


「だ、大丈夫……ですか……?」


 控えめに言って、美少年だった。

 目が隠れるほどの長さをした、銀色の髪。

 肌は白い方で、ボロボロの衣服を着た男の子だ。

 13歳は超えてるか。


 童子と呼べるほど幼い歳ではないだろう。

 だが、顔立ちは幾分か大人びているだけで、体つきを見れば、やはり子供だ。


 ボーっとした様子で、紗枝は思う。


(……可愛い)


 モテなさすぎると、見境がなくなる。

 だから、本来好みを大きく外れた者だって、後の事を考えて選んだりもした。


 全て不発に終わったが、本来の好みは『可愛い男の子』。

 紗枝の好みを見事に射抜いた少年だった。


「あ、やば……」


 そう言って、再び気を失ってしまうのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る