10. 死にかけの蝶と四つの考察
死にかけの蝶が芝の上をヨロヨロと飛んでいた。
僕はそれを見て、踏んづけてしまおうと思った。
*
だってさ、
見ていてなんだか目障りだし、醜かったんだもの。
で、僕は踏みつけようとその蝶に近づいた。
*
一秒後、僕はその蝶に同情した。
健気だなぁ。
ヨロヨロでもあんなに必死に飛ぼうとしてさ。
誰にその命を絶つ権利があるのさ。
で、僕は立ち止った。
*
いや、待てよ、今蝶は苦しんでるんじゃないか?
苦しくてもがいていて、むしろもう死を望んでるのではないか?
ヨロヨロになってもまだ一生懸命生きなくちゃいけないのだろうか?
僕は近づいた。
よし、踏みつけよう。
*
いや、よく考えてみろ。
蝶っていうのはもともと芋虫だ。
それに羽が生えただけだ。蝶を踏むってことはつまり、
芋虫を踏むってことだ。
芋虫!
う~ん・・・
蝶はやがてフラフラと草むらの陰で羽を休める。
なんてことはない。
これが生物の一生の遂げ方さ。
僕なんかが感傷に浸るようなレベルじゃない。
もっと雄大で豊満で無関心で悠久の、
もっと美しい世界。
多分、きっとどこかでまた新しい命が始まる。
どこかに卵があって、
卵からは新しい...
芋虫!
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