8. キマイラに笑われて

22歳のころ、皆でクレタ島を旅行したことを思い出す、唐突に。

ほんと唐突だった。


シャワー浴びてる最中で、リンスがそろそろきれそうで替えを買いに行こうかとか、そんなこと考えてたときに突然、そのクレタ島の思い出がよみがえった。


まぁ、その思い出のことは他の機会に書くとして、

とにかくすっごく懐かしくなってしまって、その当時のやつらにメールを送った。

夜中だったけど、まぁ、みんな起きてた。

夜行性どもが。

で、何気なくきた返信、


「みっちゃん、ワタシ子供が生まれるかもしれないんだよね」だって、


おぉぉい!どんなタイミングww!

ここ何年も連絡とってないで、ふとメールしたら、というこの偶然!

...私ってそういう、謎の勘にめぐまれてんのね。

...うん。とりあえず、一呼吸置き、

「めでたい!」

ひとしきり、メールで祝って、またみんなで会おうねなんて言ったりして。


それから興奮がおさまらず、

なんだか眠れなくなってしまったので、竜ちゃんと外を散歩した。


普段あまり履かないレムレスのブーツを、ここぞとばかりに履きつぶす。


夜空がきれい。


1時間くらい近所をほっつき歩いた。午前1時13分。

うーむ。

今、

ここ何年かで一番、幸福って感じの気分、なのよね、うん。

昼間は、会社の上司にネチネチ嫌味言われてムカついてたのが、全部マボロシ。今はサッパリしてる。


そうか...

私って、子供を欲っしてたのかぁ。

知らないうちに、自分、大人になっていたのだね。フム。

子供なんてうるさいだけって思ってたのに。ずっと。

まぁ、うるさいはうるさいね。そして、バカで、汚いし、あと自分勝手だし、集中力なくて...って、ん?自虐?

そして私は、リンスの替えをすっかり忘れたのだった。


まぁいいや、

幸せな気分なんです。

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