6. ムラサキウサギ
あいつらは、今日も僕をいじめた。
三角形の風車小屋にたちこめるあの嫌な臭い。
あいつらは、僕と機械人間をキスさせて喜んでる。
あいつらの悪趣味にはもうこりごりだ。
なにが楽しいのさ、まったく。
固くて冷たいあの感触を思い出す。
機械人間のあの女の子は、ずっと目を閉じたままだった。
彼女にはいずれちゃんと謝りにいかなければならない。
とにかく、
仕返しはもう考えている。
道端に落ちているムラサキウサギのフンを水にとかして
あいつらの席に散布するんだ。
ついでに靴にも染み込ませよう。
うっひっひ、我ながら名案である。
自分の異臭に落ち込むあいつらの顔を早く見たいよ。 よぅし
夜の野原の澄み切った空気。
機械人間の少女はその空気が好きだった。
それからふと、少女は昼間起きた事件を回想し、嫌な気分になる。
自分の唇に接する、男の子の唇、よだれ、ばい菌、etc・・・
少女は野原に流れる小さな川に行き、唇を念入りに何回もすすいだ。
少女は汚いものが大嫌いなのだ。
しかし、何度もそそぐうちに水が体の中に入って行ってしまう。
少女の内部の回路が小さくショートする。
水にはなるべく近づかないようにと博士は何度も言っていた。
なんたってお前は機械の体なんだから。
それでも少女は延々と口をすすぐ。
そしてまた回路が小さくショートする。
そしてショートするたびに、少女の嫌悪感は増していく。
今までこんなに激しい感情を少女は抱いたことがなかった。
昼間の出来事のときだって、感情は抑えられていたはずなのに。
少女は延々と口をすすぐ。
野原にはムラサキウサギが飛び跳ねている。
少女は自分のなかに芽生え始めた理性を感じながら、口をすすいだ。
理性は体の中でスパークを起こしながら育っていく。
そして、
少女は気を失った。
ムラサキウサギのフンを集める呑気な少年がそこに通りかかる。
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