4. 空中障害の詩
しなびたマーガレットの香りを撒いて、
空中に固定された乳白色の乗り物に乗って、
私に微笑みかけたあの女の子。
エンジェルの翼を持ったあの女の子。
蝶々が地中に暮らしていた頃の、
青い日差しの差し込むあの日の、
まどろみのような、あの時刻。
私もまだ幼くて、
蝶々と共に地中に暮らしていた、
青い日差しに目を細めたその日の、
まどろんでいた、
その時刻に、
あの女の子がスーツケースから取り出したのは、
私専用の翼。
それを私に。私の背中に。
空から嗅いだ土の匂い。
さなぎと、鱗粉と、暖かい土の匂い。
心をゆっくり包んで融かしてくれる
その土の匂いは、しかし、
だんだんと薄まってゆく。
私が一つだけ恐れていたのは、
暗闇のない空のこと。
なにもかもが透明で、
私の心までも見透かされてしまうような、
そしてそれに心地良くなってしまうような、
甘い、けだるい、
暗闇のない空のこと。
あの女の子がスーツケースから取り出したのは、
私専用の翼。
それを私に。私の背中に。
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