2. アヴァーヌ(#85651E)

昨日、

C君の部屋で一緒に「アメリ」という映画を観ました。

パリの日常が描かれた素敵な映画です。


「ダメだ、この映画は。美しすぎるよ。目に毒だ」

エンドクレジットまで観終わってから、C君は言いました。


そんなこと言いながら、C君は月に一回以上この映画を観るらしいです。


DVDを丁寧にケースにしまうC君の指。

私はそれを横目で追いながら、

できるだけさりげない相槌を打ちました。


さりげない雑談と、

それから、さりげない沈黙。


C君も懸命にさりげない風を装っている。

私にはそう見えました。




C君には彼女がいました。

私はその人に会ったことがないけど、C君いわく、

気の強い、まじめな子、らしいです。


「じゃあ私はどういう評価かな?」と、私はC君をからかいます。

C君は少しだけ顔を赤くして笑いました。

そして、


私の髪に、ぎこちなく手を伸ばします。


お互いの顔の赤さを確認しながら、唐突に、

二人の距離が狭まっていきました。

それは、激しい胸の高鳴りでした。


決して息苦しくなんかない、心地よい、甘い、まるで映画の中にいるような、

時間が止まっているような。





C君いわく、

私は、おしゃれで可愛い女の子、らしいです。


私はこれからもC君に会うでしょうか。


でも会えなくなるなんて想像がつきません。

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