第154話 一つの仮説
そして、そう私が側仕えに提案すると、彼女は少しだけ嬉しそうな表情をしたあと、首を縦に振る。
「うん、では早速行動に移しましょうか?」
「……え?」
言質は取ったので今更嫌だとは言わせない。
そして私は彼女の気が変る前にドレスの裾から注射器が入ったケースを取り出すと、それを開けて注射器を取り出し、躊躇なく彼女の首筋にブチさすと、中身を注入する。
「あ……が……な、何を……っ!?」
「なにって、貴女を彼女達に会わせてあげる為に化け物に変えてあげているのよ。しかもまだ試作品の薬を使ってまでね」
「そ……ん、聞いて……っ、あぎゃぁぁぁあああああああっ!!!!」
「だって、どうやって再開をさせるなんて事、言ってないもの。これに関しては再開させる方法を聞かなかった貴女の落ち度でしょう? にも関わらず私のせいにしようだなんて普通は殺されても仕方がないレベルで無礼な態度なのではないかしら? でも私は約束を守る主義だわ。これできっと彼女達に再会できるのではなくて? まぁ、会えるかどうか確証はもてないのだけれど、それは貴女の努力が足りないだけであり、会えるかもしれないという切っ掛けを作ってあげあげただけ感謝しなさい。会えないからってこちらに文句をいうのはお門違い……あら、もう自我を保てていないようね。根性が足りないのではないのかしら? その程度の意思の弱さで彼女達に会えるのかしら?」
そして私が注射で薬を打つと、みるみる側仕えの身体が変形していき、見た目はまるで出来損ないのスレットのような化け物へと変化していくではないか。
そしてその化け物はそのまま背中に生えた翼を使って空へと飛び立つと、東京方面へと飛び立っていく。
「うん、あの程度のゴミですらあのレベルの化け物へと変化するところを見るに、どうやらこの薬は成功したようね」
これで使えないゴミたちを戦力としてカウントする事ができる。
これは我が組織アンノウンにとって大きな利点であろう。
使えない者も使えるようにしてあげるなんて、私はなんと優しいのだろうか。
それにしても、と私は思う。
あの薬は討伐ランクA以上のスレットの個体から採取した細胞を元に作っているのだけれども、それにしても彼女の見た目がスレットに似すぎているのではなかろうかと?
その結果を見て一つの仮説を立てるのだけれども、例えその例えが本当であったとて私のやるべき復讐は変らないので、思考の隅へと追いやると、まだ途中であった昼食を食べ始めるのであった。
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