第153話 私はやはり天才なのだろう
◆アンノウン:霧島遥博士side
「どうやらあの三人は負けてしまったようね……」
今現在私は日本某所、太平洋を一望できる別荘のテラスで昼食を取っていたところに、側仕えとして置いている実験体から資料を渡され、確認すると、どうやら手塩にかけて面倒を見てきた三名が魔術師一人殺す事もできないどころか斎藤博士の手の者に敗れたという事が記載されているではいか。
のこのこ帰って来たのであれば問答無用で実験の糧として使い潰してやるつもりだったのだが、その資料には、その三名は斎藤博士の手の者によって連れ去られたと書いてある。
どこまでも使えない奴らめ。
折角貴重な薬を渡してあげたというのに、これでは薬が彼女たちの人体に与える副作用などのデータが中途半端になってしまうではないか。
勿論、彼女達の他に実験体は複数存在する為、その者からデータを取る事は出来るのだが、やはりこういうものは母数が多い方がより正確なデータを取れる上に、彼女達は数少ない魔術師ランクBの能力者でもあった。
その為通常の一般人レベルの場合と能力的に優れた者達との違いも一緒に確認したかったのだが、これではそれも難しいだろう。
それでも途中経過だけ見れば一般との差はあまり無かった為、能力差による身体への影響はあまり変わらないと判断しても良いだろう。
「奪い返さなくてもよろしいのですか?」
そんな私の思考を読んだのか、側仕えが彼女達を奪い返さないのかと聞いてくる。
「えぇ、かまわないわ。面倒くさいというのもあるのだ、斎藤博士の手に渡った時点時間違いなく既に弄られていると思って良いでしょう。そんな奴らを取り戻したところで正確なデータを取れるとも思わないもの。そんな奴らを組織のメンバーを使って取り戻すだけのメリットは無いわね」
「……そうですか」
そういうと側仕えは少しだけ寂しそうな表情をする。
そう言えば、この側仕えとあのモルモット三匹は仲が良かったなという事を思い出す。
「ねぇ、貴女」
「……はい、何でしょうか?」
「斎藤の元に行った彼女達に会いたくはないかしら?」
しかしながら私の実験の邪魔をされた事に対して怒りの感情が無いわけではない。
勿論、この場で転がり回り、叫び、物を投げ、地団太を踏みたいくらいには腸が煮えくり返っている。
しかしながら私の一時の感情で大切な駒を失う訳にもいかないと思っていたのだけれども『もそもその駒が大切駒でなければ良いのでは?』と側仕えを見て思いついた私はやはり天才なのだろう。
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