第147話 裏切りの証拠
どこまでも難い奴である。
「私の目から見ても東條君は規格外だな、全く。そもそも男性であるのに魔術が使える時点でおかしな話であるのに、その威力もさることながら彼の戦闘における経験値は一体どこで得て来たものなのか……。ハッキリ言って今現在世界で活躍しているトップレベルの魔術師たちよりも経験豊富な気がしてならないな……っ!! あぁ、観察のし甲斐があるよっ!!」
そんな私たちの横に斎藤博士が立つと、そう興奮気味に話すではないか。
正直この人は変人だと会ったその時から思っているのだが、彼に対してはこの変人と同意見である。
それだけ彼が規格外という訳であり、決して私が変人ではないと思いたい。
「それでは、治療しに行こうか……っ」
いったいどれくらい彼を見ていたのだろう。
正直な話しを言うと彼の戦闘に見惚れていたと言って良い。
時間も忘れて見入っていると斎藤博士が、私たちに治療の時間だと催促して来る。
この治療が本当に治療であるのか、はたまた斎藤博士の実験に使われているだけなのか、その両方かは分からないのだが、それでも何もしなければただ死を待つだけだという事は理解できている。
それだけに私たちが今まで使用してきた、この『一時的ではあるが能力を上昇させる薬』というのは厄介なものであるというのは、使用した私が何よりも知っている。
正直な話し、今では手の震えが出始めており、そして手先や足先の感覚も鈍くなってきているという実感もある。
当初は、この世界の魔術師のあり方に疑問を感じ、そして憎しみすら抱いており、命を捨てででもこの腐った世界に一矢報いたいという一心で生きて来たし、その価値観は今も変わらない。
しかし、その価値観は変わらずとも行動に対する価値観は斎藤博士たちと出会えて少しずつ変わってきているのは理解できる。
それは他の二人も同じようで、今ではこうして従順な態度で斎藤博士に従っているのだが、それこそ捕まって奴隷になったばかりの頃は反抗しまくって奴隷紋による激痛により失神してしまう程であった。
そんな私たちに斎藤博士は『ここの組織も世界の魔術師のあり方を疑っている組織、いわばあなた達が外部の敵対組織だとするならば私たちは内部の敵対組織、獅子身中の虫という訳だっ!!』というのを、裏切りの証拠付きで教えてくれた。
勿論、それは私たちが斎藤博士の奴隷だからこそというのもあるのだが、普通はそんなリスクをいくら奴隷であろうとも教える訳がない。
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