第146話 化け物だな、コイツ等
そう早口で捲し立てる斎藤博士は、どう考えても焦っているようにしか見えないのだが、その事を突っ込むと話がややこしくなりそうなので、ここは黙っておいてあげるのが大人の反応だろう。
因みに異世界で三十年生きて来た俺からすれば、斎藤博士は年齢込みで全然ストライクゾーンに入っている(変人でなければ)のだが、当然これに関しても黙っておく。
万が一その事が斎藤博士の耳に入れば、気が付いたら逃げられない状態に周囲を固めた上で法律上でも無効にできない段階でいつの間にか婚姻関係にされていそうで怖い、というか間違いなくしているだろう。
斎藤博士には申し訳ないのだが、俺にも選ぶ権利はあるからな。
「まぁ今回は良いデータが取れそうな玩具……ではなくて、被験体……ではなくて、私の知らない知識を持っていそうな三人の女の子たちを土産で連れて来てくれたので、それで勘弁しておいてあげようではないかっ!! 東城君っ!!」
「斎藤博士、その子たちは東城君が斎藤博士の為にプレゼントとして連れてきた訳ではないという事は理解できていますよね……? 流石にボケでありツッコミ待ちですよね……?」
「…………え? 違うのか?」
そう助手の中島と言い合いをし始める斎藤博士を見て、明日にでも戸籍を弄られないように不受理申請をしに行こうと本気で思うのであった。
◆
私たちは負けた。
それも圧倒的な戦力差でだ。
ドーピングをしてまで、自分の命を削ってまで相手を潰しにかかったのだが、そんな物で手に入れた力など所詮は紛い物だと突きつけられたような感じである。
いや、実際にそうなのだろう。
急に過ぎた力を手に入れた所で、その力を入れるまでの過程、いわゆる努力や実戦経験というのは欠落しており、正統な方法で力を手にした者と比べるとどうしても駆け引きや戦い方で差が出てしまうのはどうしようもない事だろう。
「…………す、凄い」
そんな私の目の前では今、私たちを倒した三人の魔術師相手に、男性魔術師が一人で相手をしており、それだけではなく直すべき癖や改善方法等ひとつひとつ的確な指摘をしているではないか。
「化け物だな、コイツ等……」
「私たち……負ける……分かった……デス」
そして他二人に関しても私と同じ感情を、この四人の模擬戦を見て感じていたようである。
そして、同時に思う。
悔しいと……。
私たちは今現在、この組織の奴隷契約をされている以上今一度クーデターを起こす事は勿論、関係者に危害を加える事ができないのだが、それでも生かせてもらえているのはあの男性のお陰であると聞かされている。
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