第142話 この程度造作もないわね


 そして、今の私は薬によって身体能力が一時的に向上している状態である。


 私の魔術行使用媒体は見た目通りパワーと防御力を増大する性能が高く、元々の身体能力を上げる薬との相性は抜群である。


 故に、薬を服用した私に勝てる魔術師など、この世には存在しないだろう。


 それこそ束になってかかってきたところで自慢のパワーと防御力で一人一人捕まえて潰していけばいい。


 それに、私だけではなく同じ志を持った仲間がいるのだ。


 こんなぬくぬくと生きていて裏で起こっている悲劇から目を背けている負けるわけが無いのだ。


「行くよっ!!」


 そして魔術行使用媒体を装備し終えた私は、相手に目掛けて何の捻りも無く突撃していく。


「猪突猛進は良いのだけれども、何の考えも無く突撃するだけでは簡単に避けられてしまうわね。口だけは達者のようだけれども所詮はAランクにすらなれない魔術師崩れでしかないという事ね。いくら身体能力が強くともそれを駆使する技術の知能、そして高いレベルで培った経験が無ければ宝の持ち腐れでしかないわ。それを言い換えるのならば今の貴女は所詮『攻撃力が高いだけのBランク魔術師』の域は出ないわね」

「…………言ってなさい」


 確かに巨大な刀を構えている女性の言う通り私の魔術行使用媒体である【牛鬼】は直線でしか突撃できず、攻撃は比較的読まれやすいのが欠点でもある。


 しかしながらだからこそ『相手が避ける位置をこちら側である程度コントロールしやすい』という利点もあるのだ。


 故に罠にハメやすい。


「…………捕えたっ」


 予め罠を蜘蛛型の魔術行使用媒体を持つリーシャが仕掛けており、女剣士型の魔術師はこれでお終いであろう。


「教科書通り過ぎて、期待していただけにため息が出てしまうわね……」


 そう思っていたその時無数の斬撃を飛ばしてリーシャの仕掛けた罠を切り裂いていくではないか。


 少しでもリーシャの仕掛けた蜘蛛の糸を模倣した糸に触れれば相手を捕まえる事ができるのだが、巨大な剣で切るのではなく、そこから斬撃を飛ばされてはリーシャの仕掛けた罠は機能しなくなってしまう。


「斬撃一つは直接切りつけるよりも確かに威力は低く、魔術行使用媒体を装備した魔術師相手にはダメージも見込めないでしょう。ですが、こういう小技を持っている、そして使いこなせなければ到達できないのが国家魔術師なの。お薬を使って向上した能力で押し切るやり方をしている魔術師たちには理解できないのかも知れないけれど。あと、今まで腐っても国家魔術師を狩ってきた貴女が何も策も無く突撃する訳が無いもの。罠の一つや二つあるものだと予め予測できていればこの程度造作もないわね」


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作品紹介(*'▽')ノ


この度新たにコンテスト用作品(「嫁入りからのセカンドライフ」中編コンテスト)へ一作品だけ参加予定の下記作品を連載しております。

※五万字前後で完結予定


タイトル

婚約破棄された公爵令嬢は罰として嫁がされた旦那様のお陰で日本(地球)の食べ物に舌鼓を打てて今日も幸せです


キャッチコピー

え? ゲテモノとして捨て値で売られているウナギを食べるんですのっ!?


あらすじ

ある日、いきなり婚約者であり第一王子でもあるシュバルツ殿下から婚約破棄を言い渡されたシャーリー。

そして罰として嫁がされた先でシャーリーの運命は大きく動き始めるのであった。



 上記作品が気になった方は是非一度読んでくれると嬉しく思います('ω')ノ何卒です

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