第135話 そんなのは甘すぎる



 そして目の前の国家魔術師は悪びれる事もせずそんな事を言うではないか。


 魔術師の資格を得て軍に所属しようとする人間全てがそうではないという事は理解しているのだけれども、それでも魔術を使って戦闘行為を行うという仕事内容故に、その中には『攻撃魔術を実戦で行使してみたい』『とにかく弱い者を自分の魔術で蹴散らしたい』などいう、少し変わった価値観を持っている者が志願しに集まってくるような仕組みになっているのは、業務内容が業務内容な故にどうしようもない事なのかもしれない。


 そして、この変わった価値観を持っている者の中には目の前の魔術師のように『相手の立場に立って考える事ができない』『自分の目的の為ならば邪魔になる相手などどうなったってかまわない』という異常な思考を持っている者もいるのもまた事実である。


 このような思考の持ち主は魔術師に限った話ではなく、どこの業種にも存在しているのだけれども、それが『強力な魔術を行使できる』という才能と環境が合わさった結果、目の前の魔術師の様な生きている価値のないゴミが出てくるのである。


 国はその事を把握しており、問題を起こした魔術師は即刻国家魔術師としての資格を剥奪からの、問題行動の内容によっては即実刑という事をしているし、年々強化している事も知っているのだが、はっきりと言って甘いとしか言いようがない。


 そもそも、このゴミたちもその事を知っている為バレない様に知恵をつけて様々な隠ぺいを行うし、このゴミたちを捕まえるにしても同じ魔術師が対応しなければならず、最悪捕まらない為に暴れ、そしてそこで逃がしてしまうというのも過去何度か起こっている。


 そして捕まり実刑が確定したとしても、塀の中とはいえ三食寝床付きの生活が待っており、人を殺していない限り基本的には数年で外の世界に出る事ができる。


 そんなのは甘すぎる。


 こいつらはそもそも私たちとは価値観も考えかたも何もかも違う時点で更生の余地は無いと断言できよう。


 それを証明するかの如く、今まで捌いて来た魔術師たちは誰一人として自分の行いを悪いとすら思っていなかったし『自分の邪魔になるような奴が悪い。 そんな奴を排除して何が悪い』というような思考回路を持つゴミばかりであった。


 だからこそ私はこいつらを潰すのだ。


 殺す事は簡単であるだろうけれども、死んで終わりではあまりにも被害者たちが報われない。


 だからこそ私はこの者たちの生き甲斐である『暴力を振るえる身体』を、手足を潰して奪うのである。


 死ぬまで後悔し、私を恨んで死んでいけば良い。

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