第136話 思わず笑ってしまう


 彼女達の『生き甲斐を奪われた残りの人生』というのは死よりも辛いものがあるだろう。


 今まで見下して来た者達、自分の魔術で簡単に制圧する事ができたような者達の介護がなければ生きていく事すらまともにできないような日常。


 そして何か問題が起こった時には今まで行使できた暴力によって解決する事ができないのである。


 それだけではなく、今までそのように生きて来たツケも一気に襲い掛かってくるだろう。


 そう、例えば自分よりもしたの魔術師たちに対して好き勝手して来たのであれば恨みつらみを抱いている者達も複数人いる事だろうし、仲間だと思っていた者達も離れていくだろう。


「そう、でもそんな事は関係ないの。 貴女が実際に起こしたという事は調査済みであり、言い逃れができない証拠もある。 そして今現在においても軍に所属した魔術師で気に入らない者が入隊した場合は辞めるまでいじめていることも知っているし、過去の行ないや現在の行ないを反省する素振りがない事は今の貴女の態度を見れば一目瞭然。 ハッキリ言って生きている価値すら無いゴミである事は、誰がなんといった所で覆しようが無いわ」

「……言わせておけば好き勝手言ってくれるじゃない。 殺されたいようだねぇ……」


 そして私が得た情報を一つ一つ提示していくと、目の前の魔術師は私を殺すと言うではないか。


 その言葉を聞いて私は思わず笑ってしまう。


「何がそんなにおかしいんだい? あと、貴様を殺す事は決定事項だから、もういくら泣いて謝っても許したりなんかしないよ」

「これが笑わずにいられますか……っ。 だって私よりも弱い癖に、この私を殺すって言うんだから笑わずにはいられないでしょう? あと、泣いて謝っても許さないという言葉をそっくりそのまま貴女に送り返してあげましょう」


 そう私が売り言葉に買い言葉で返した瞬間、相手は魔術行使用媒体を起動して水系統の攻撃魔術を行使して来たので、私はその魔術を見てから炎魔術で対抗すると、一気に水が蒸発して小規模な爆発が起こる。


「確かに、魔術行使用媒体を起動してからの攻撃魔術へと繋げるスピードは目を見張るものがあり、流石腐っても国家魔術師であると思える技量ではありますが、残念。 私の方が早いようですね」

「ふざっけんじゃ無いよっ!! この私をバカに──グハッ!?」

「誰がいつ私一人でのこのこやって来たと言ったんですか? 腐っても国家魔術師を相手にするのですから一人で相対する訳が無いじゃないですか? バカなんですか?」

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