第133話 休暇を満喫していた中島助手
恐らく、連続的に爆発音や固い金属同士がぶつかるような音が聞こえてくる時点で魔術師同士のいざこざ、そう、それこそ今世間を賑わせている魔術師狩りである可能性もある。
「取り敢えず、今すぐこの場から逃げようっ」
その為俺は面倒事に巻き込まれるのはごめんだと判断してすぐさまこの場から離れるよう三人にも促すのだが、俺はその三人の『待ってましたっ!!』というような表情を見て察してしまう。
あぁ、これ絶対に首を突っ込む流れだな……。
「えぇ、そうねっ。 早くこの場から離れて──」
そう思っていたのだが、俺はこの三人を信じてやれていなかった事に気付かされる。
「──人気のないところを見つけて黒の魔術師へと変身するのよっ!!」
「まさかぁ~、私の王子様から率先してそのように言ってくださるなんてぇ~意外ですぅ~っ」
「おうっ!! 黒の貴公子様もやる気満々で嬉しいぜっ!!」
そう思い、俺は新たに心を入れ替えて人を疑う事をできるだけ止めようと思おうとした俺の感情を返して欲しい。
「というか……え? 黒の魔術師……?」
「えぇ、そうよ。 もう既にネット内では黒の貴公子を中心とした黒い衣装の魔術師たちという事で私たちの事を『黒の魔術師』と呼ばれ始めているみたいよ? 初めはその、何の捻りもないネーミングセンスに別の呼び名を考えようかとも思ったのだけれども、考えれば考える程この『黒の魔術師』という呼び名が良いような気がしてきて、結局私たちでも黒の魔術師と呼ぶようにしたのよ。 ほら、シンプルイズベストとも言うじゃない?」
うん。 俺が聞きたかった事はその『黒の魔術師』というネーミングではなくて、俺たちがもう既に『黒の魔術師』として活動する事が決定しているかのような言い回しであったのだが、麗華の反応からみてもこれから先俺はこの姦しい三人と一緒に『黒の魔術師』として活動していく事は決定事項である事が窺えてくる。
「そしてこれから俺たちはその、なんだ? 『黒の魔術師』とやらに変装──」
「変身……間違えないでちょうだい。 大事な部分よ」
「──す、すまん。 変身して、今起きているであろう事件に首を突っ込む──」
「助太刀よ。 首を突っ込むという表現は正しくはないわ」
め、面倒くせぇ……っ。
「──そ、そうだな。 首を突っ込むんじゃなくて助太刀だな。 要は変身して助太刀をしに行くという事で良いのか?」
「えぇ、その認識であっているわね」
「私の王子様との共同作業でもありますぅ~っ」
「動画撮影だが、たまたま休暇を満喫していた中島助手が近くにいるらしいから既にスタンバってもらっているぜっ!!」
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