第131話 麻薬的な快感
「見てくださいぃ~っ! 今日の新聞ですぅ~っ!!」
そして俺はもうどうにもならないと現実逃避をし始めた所で千里が俺を強引に現実へと引き戻してくるではないか。
その千里が満面な笑みで俺達に見せつけて来るその新聞には一面で俺達が写っている写真がでかでかと掲載されているではないか。
これ、肖像権云々で抗議したら取り下げてくれるのだろうか?
「この新聞を手にする為にぃ~、昨日の夜からコンビニに並んでたんだぁ~。 勿論家で取っている新聞もあるのだけれでもぉ~、それは家族の新聞だしぃ~私個人の分が欲しかったからぁ~、何とか購入できて良かったですぅ~っ!!」
とは思ったものの、どうやってこの写真に黒の貴公子と紹介されて写っている人物が俺であるのかを証明するのか、そして新聞を回収してくれたところで既に全て購入されて回収できる新聞は無いであろうし、そこまで広まってしまっては回収するなどいまさらであろう。
そもそも動画で投稿されている時点で今さらだし……。 あぁ、頭が痛い。
「きゃぁーーっ!! いいわねっいいわねっ!! 私も並んで購入したら良かったなぁ……っ! 私も家でママに見せて貰ったのだけれども、流石に譲ってとおねだりしても貰えなかったもの……っ!」
「おう、俺も朝お父さんから新聞をひったくって読ませて貰ったぜっ! でも確かにそう言われてみると自分の分も欲しかったぜっ!! 流石千里だなっ!!」
そんな俺の心情などお構いなしとばかりに女子三人は姦しくもきゃいきゃいと騒ぎ始める。
こいつらはこの状況がどれほどヤバい事なのか理解しているのだろうか?
しかしながら俺もこの娘たちの年齢、異世界へ転移する前の俺であれば間違いなく今のこの状況を喜んで優越感に浸っていただろうから仕方がないのかもしれない。
それほど承認欲求というものは麻薬的な快感をドパドパと脳内に垂れ流しているのであろう。
「取り敢えず正体がバレたら面倒くさい事になるから、それだけは本当に気を付けてくれよ?」
「あら、そんな事は当然よ」
「当たり前ですぅ~っ」
「俺達の正体がバレると言う事は黒の貴公子の正体もバレてしまうって事だからなっ!! そうなったら私達だけの王子様じゃなくなっちまうからな……っ!!」
その為この年齢の子供達へ承認欲求を抑えるように言うのは無理難題であろうと判断した俺は、せめて俺達の正体がバレないように細心の注意を払ってもらうように伝えると、彼女達から『当然である』と返ってくるのだが、少しばかり心配である。
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