第129話 ツッコむ事を放棄する
「それを早く言ってくださいよぉ~っ」
「ったく、いつも麗華は俺達に説明するのが遅すぎるんだよ」
◆
「…………」
「…………」
「…………」
そして麗華はそう説明した後二人を連れて修練場へと移動すると、二人へ斎藤博士が既に作っていた千里と依鶴専用の魔術行使用媒体を渡す。
すると三人は無言になり見つめ合うと、まるで練習してきたのかと思っている程三人同時に魔術行使用媒体を起動させると、各々魔術行使用媒体を重ね合わせて天へ向けて(室内の修練場である為天井なのだが)突き上げるではないか。
「私たちは誓うっ!!」
「私たちはぁ~生まれた日は違えどもぉ~っ!!」
「死す時は同じ日同じ時を願わんっ!!」
そして俺はこの光景を見てツッコむ事を放棄する。
そもそもツッコむところが多すぎてキリがないというのもあるが、そう簡単にツッコんでもらえると思われたら流石に俺の身体が持たない。
でもまぁ、本人たちはツッコミ不在でも楽しそうにやっているっぽいので、それで良いだろう。
「これで、東條様を主とした黒の組織が誕生した事になるわね……。 これからますます忙しくなるわよっ」
「麗華の説明だとぉ~私の王子様からバフをかけて貰えるらしいのでぇ~、早く私の王子様の濃くてドロッとしたバフをかけて貰いたいわぁ~っ!!」
「しかも普通の魔術行使用媒体ならば壊れるのに、俺達の魔術行使用媒体だけは壊れない仕様とか、黒の貴公子に選び抜かれた魔術師みたいで最高じゃぁねぇかよっ!! 滾ってきたぜっ!!」
「いや、何言ってんだお前らっ!? 俺はバフをかけるもりも無ければそもそも黒の組織とか作るつもり無いんだがっ!?」
そう思っていたのだが、流石の俺も、いくら彼女達が楽しそうだとは言えツッコまずにはいられなかった。
というか、ここで止めなければ間違いなく面倒くさいヒーロー戦隊的なゴッコ遊びに付き合わされてしまいそうな未来が脳裏へ鮮明に浮かぶので、流石に否定する為にもツッコまなければならないのであった。
──その日から一週間後 某SNS動画サイトに複数の動画が投稿された。
体長五十メートルはあろうかという巨大な蛇型のスレット相手に苦戦する魔術師達。
もうだめかと思ったその時、あの者達は何処からともなく現れた。
黒の貴公子を中心に、頭を下げる三人の魔術師たち。
当然その魔術師たちの衣装も上下真っ黒であり、まるで軍服とゴスロリ調のドレスを足して割ったような衣装がまた、黒の貴公子の衣装と相まって独特な世界観と雰囲気を作り出していた。
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