第127話 うん、分かってはいた
そして一触即発の雰囲気が霧散した事を確認した麗華が、俺の正体を隠していた事はわざとではないという発言に、再度空気がピリついて来るではないか。
折角治まったのに何故また爆弾を放り込むのか理解できないのだが、麗華も何か考えがあっての事だろう。
そうでないとただのバカか戦闘狂としか思えない。
…………その可能性があるから怖いんだよな。
「あらあら、私達に黙っていた事に理由があったとでも言うのかしらぁ~?」
「ふざけた事をぬかすんならタダじゃおかねぇからな?」
そしてやはりというかなんというか、千里や依鶴は喧嘩腰になっているではないか。
何故こうもこの世界の女性、特に魔術師または魔術師を目指す学生は喧嘩っ早い女性が多いのだが、血の気が多いから魔術師を目指すのか、魔術師を目指す過程で血の気が多くなってしまうのか。
「そうね、今直ぐには教える事は出来ないのだけれども、放課後数時間だけ時間を貰えないかしら? そこで全て説明するわ」
そんな、今にも魔術をぶっぱなしそうな雰囲気の二人に臆する事も無く麗華は冷静に返す。
「……麗華がそういうのならば仕方がないですぅ~。 放課後まで待ちますよぉ~」
「……ったく、水臭いじゃないか。 俺達の仲だろう? まぁ、まだ許したわけじゃぁないからな?」
そして一分ほどお互いに沈黙したかと思うと、千里と依鶴は殺気を消すと、放課後麗華に付き合うという事で一旦は納得してくれたようである。
それに関しては良かったと胸を撫で下すのだが、それとは別に俺の第六感がけたたましく警告音をさっきから鳴らしているではないか。
そもそも何故麗華は今ではなく放課後でないと説明できないと言ったのか?
その部分は物凄く引っかかるのだが、答えを出したくないので俺は考えるのを放棄する。
なるようになる、それだけだ。
◆
「いやぁ~よく来たねっ!! 千里君に依鶴君っ!! ようこそ、私の研究所へっ!!」
うん、分かってはいた。
麗華が放課後まで待って欲しいという事はこの変態博士の所へと二人を連れて行くであろうことは。
しかしながらこの二人を連れて行った所で何をするというのか、そして何故麗華がこの二人に直ぐ伝えなかった理由とどんな関係があるというのだろうか……。
あぁ、分かっている。 その答えは俺の首元まで出かかっているのだが、それはあくまでも俺の推測でしかなく、そうなるとまだ決まった訳ではない。
そしてその推測に納得してしまったら現実になるような気がしてならないので俺は知らない体を装い続ける。
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