第126話 ポイズン


「何をやっているんだよお前たち……」


 とりあえずこのままだと間違いなく面倒くさい事になるであろう事は間違いない為、そうなる前に俺はこの三人の間に入って一触即発の雰囲気を収めようとする。


「と、東條様……。 ごめんなさい、私としたことが。 このような有象無象ごときに熱くなってしまったようだわ」

「だ、旦那様が私の事を思って麗華を止めてくれたのですねぇ~っ。 ありがとうございますぅ~っ」

「く、男性なんてくそくらえって今まで思っていたが、こうして直に心配されるとやべぇーぜ……っ。 てかさっきの動画に取っておけば良かったっ!」


 すると三人とも変な勘違いをしてくれたようで、なんとか一触即発の雰囲気は霧散したようである。


 とりあえず、一触即発の雰囲気が霧散してくれたのは良いのだけれども、目先の利益に飛びついて長い目で見れば余計に面倒な事になっていそうな気がしてならないのは気のせいだろうか?


 どうか気のせいであって欲しい。


「ごめんなさいね、千里に依鶴。 少しだけ周りが見えずに突っかかってしまったみたいだわ」


 …………少しだけ?


「いいのよ、麗華。 それは私たちも同じだもの。 それに、私たちも少しだけ高圧的な態度を取ってしまったのだからお互い様ね」


 …………少しだけ?


「あぁ、そうだな。 それを言うと俺たちも少しだけ熱くなってしまったようだぜっ! だからお互い様だなっ!!」


 …………少しだけ?


 あれ? これって俺の感じ方がおかしいのだろうか? 


 三人ともが『少しだけ』と表現している為そう思ってしまうのだが、どう考えてもこの三人の方がおかしいのだと思えるだけまだ俺の思考は正常らしい。


「ここでお互いいがみ合ってもお互い不利益しかないものね」

「えぇ、そうねここは正々堂々真正面から戦ってこその恋する乙女よねぇ~っ」

「三人の内誰が選ばれるか。結果がどうあれ恨みっこなしだぜっ!!」


 そして何やら三人の絆は何故か深まったように思える。


 思えるのだが待って欲しい。 一言だけ言わせて欲しい事がある。


 俺はこの三人から選ばなければならないというルールが何故か適用されているような気がするのだが気のせいだろうか


 結婚願望はあるし恋人も普通に欲しいとは思うのだが、せめて普通の女性がいいのだけれど……?


 そう言いたいのだが、とてもではないが言い出せる雰囲気ではなかった。


 言いたいことも言えないこんな世の中じゃポイズンだよ、まったく。


「それはそうと、別に私は貴女たちに隠そうとしていたわけではないわよ?」

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