第125話 お可愛いこと
確かに、麗華にそう言われれば『そうかもしれない』と思ってしまう。
しかしながら『そうじゃないかもしれない』のも確かであり、結局のところ受け取り側の問題であろう。
そして俺と麗華との先程のやり取りが世間一般に『イチャイチャ』に含まれていないという価値観の方が多いはずである。
だからこそ、俺達の事をねっとりと観察している二人にも俺と同じように『イチャイチャに含まれない』と思ってくれているはずである。
そもそも先程の俺と麗華とのやり取りがイチャイチャしていると言うのであれば、そのやり取りの際の会話があの離れた二人には聞こえる筈が無いので、やり取りが聞こえないのであれば『イチャイチャしている』という判断をするのはかなり低いだろう。
そして、あの二人はどうやら俺達の事を観察するのを止めたらしく、先ほどまでいた民家の屋根の上から姿が消えていた。
おそらく彼女達二人も『なんだ、付き合っているかと思ったけど、そんな事も無さそうね』『そうみたいねぇ~。 先程からずっと観察しているのにまったく恋人らしいことをしないんですものぉ~』というような会話をして、これ以上観察してもつまらないと判断したのであろう。
結局あの程度で『イチャイチャしている』と他人に思われると思っていた麗華が、ただ意識し過ぎていただけであったようである。
「おいお前ら……」
「私達に見られていると分かっていて見せつけていたのかしらぁ~」
「だとしたらここで麗華よりも俺達の方が魅力的だという真実を教えてやる必要があるみたいだな……っ!!」
そう思っていたのはどうやら俺だけであったみたいである。
例の二人はいつの間にか俺達の前に現れると麗華を始末するなどと物騒な事を言うではないか。
「あら、負け犬の遠吠えかしら? でも、所詮遠吠えは遠吠えでしかないわ。 いくら吠えた所で私の方があなたたち二人よりも魅力的で、だからこそ東條様は私をお選びになられたという事実は変わらないわよ?」
「ぐぬ……言わせておけば……っ! ただ俺達よりも早く黒の貴公子の正体に気付いただけで麗華が魅力だからという訳ではないだろうっ!!」
「えぇ、まったくのその通りですぅ~。 麗華はただ単に運が良かっただけですよぉ~っ」
「あら、キャンキャンと負け犬さん達が吠えて……お可愛いこと」
そして、何故か二人の仲間であり友達でもある筈の麗華が火に油を注ぎまくっているではないか。
今にも二対一で戦闘が始まってしまいそうな程の緊迫感に包まれる。
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