第124話 『イチャイチャ』に含まれる



そして俺はどうしたものかと考える。


 ここであの二人の事を麗華に教えてあげても良いのだが、それはそれで面倒くさい事になりそうなので黙っていた方が良いのか。


「なぁ麗華。 今必死に考えている所悪いのだが、あそこにいる二人ってお前のパーティーメンバーだよな?」


 しかしながら、結局あの二人に恐らく俺の正体がバレているのだとしたら今ここで麗華に、あそこで俺達の事を盗み見ている事を教えなかったとしてもいずれバレるだろう。


 という事はこのどう考えても面倒くさいイベントを今消費するか、先延ばしにするかの違いしかないのであればさっさとその間違いなく面倒くさい事になりそうなイベントを終わらした方が良いだろう。


 こういう場合は基本的に、先延ばしにしたらその分だけ更に面倒くささが増しているものである。


 気付いた時に終わらないと先延ばし癖がついてしまい、やらなければならないけど今すぐやる必要は無いからと一向にやる気が起きなくなるという事も普通にある。


 その場合は先延ばしにしたせいでさらに面倒くさくなっていくのを見て余計に先延ばしにしてしまうという悪循環が起こり、気付いた時にはどうしようもない状況になっているというものである。

 

 そう、それこそ夏休みの宿題などがその代表的な存在であろう。


 夏休みが始まった当初は無限にあると思えるほどの休日で『今やらなくても問題ない』と先に延ばして、結果夏休み最終日に徹夜で宿題を終わらす破目になり、そして間に合わずに学校で怒られる。


 その為こういう『今やらなくてもいい』というものは大抵『今やっておけば圧倒的に楽』というものなのである。


「…………確かにそうね。 まぁ、そうやって遠くで私達がいちゃついている所を指をくわえて見ていれば良いわ。 なんなら千里と依鶴が嫉妬で狂うところを見てみたいのでここでキスとかどうかしら? そ、それこそ……そ、その……舌を絡ませるでぃ……でぃーぷなキス……とか……っ」

「恥ずかしいなら無理に言う必要は無いぞ。 あと何故イチャイチャする事が決定事項というか俺と麗華の日常の一部みたいになってんだよ」

「…………?」

「いや、何で『この人は一体何を言っているのかしら?』みたいな表情をして小首をかしげてもイチャイチャはしないからな?」


 むしろ『この人は一体何を言っているのか?』と俺が麗華に聞きたい気分である。


「東條様……」

「なんだ?」

「世間一般にこの今私と東條様とのやり取りも『イチャイチャ』に含まれると私は思うのだけれども?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る