第104話 でも、本当は話したい



「ふーん、そうなんだ。 綾香は昔から恋愛とかに疎いからシャニーズジュニアとかも興味ないって言っていたもんね」


 そして私のその反応を見た友達が納得したようにうんうんと頷くではないか。


 確かに、私は巷の女性たちが黄色い声を上げてカッコいいと持て囃しているアイドル達には少しもカッコいいと思った事も無ければ魅力的とさえ思った事が無かった。


 テレビでアイドルとして活躍している人たちですらこれなのである。


 一般男性ならば猶更、やれ一学年先輩の誰それが犬系みたいで飼ってみたいとか、となりのクラスの誰それならば紐にしても良いだとか、心底どうでも良いと思ってしまう。


 そもそも可愛いから飼いたいだとかカッコいいから紐にしたいだとか意味が分からない価値観でしかない。


 それに、私は遥か昔のお伽噺のような、女性がピンチな時に颯爽と現れて助けてくれる強い男性に憧れているだけであり、男性に興味がないわけではないのだ。


 しかしながら男性が女性を助ける世界は所詮一世紀も前の話であり、今この時代で私がそのような強い男性、それも女性がピンチの時に助けてくれる男性がタイプだからみんなの言う飼いたい系だとか紐にしたい系だとか真逆のタイプで全くと言って良いほど、その良さが分からないと言った所で『コイツ何言っているんだ?』と変な目で見られて終わりであろう。


 そう、あの男性魔術師が現れるまでは。


 あの男性魔術師が現れてからはクラスの女子たちは昨日まで飼いたい系だの紐にしたい系だの言っていたにも関わらず『ピンチの時に助けてくれるくらい強い男性って良いよねっ!!』と手のひらを恥ずかしげもなくひっくり返しているではないか。


 今ならば今まで隠してきた異性のタイプを話す事ができるかもしれない。


 そう思ったものの産まれてこのかた私は恋愛に興味がない体でこういう話題は避けて来てしまったが故に、どう自分の異性のタイプを伝えれば良いのか分からないし、友達は友達でそもそも私の事を『恋愛に興味がない』という風に思っていないので、そういう話は振ってくれないどころか、先ほどのように偶に振ってくれた時は心の準備ができておらず、咄嗟に興味ない体で対応した結果、今話題の男性魔術師にも興味がないというレッテルを貼られてしまったのである。


 でも、本当は話したい。


 じつは恋愛には年相応に興味があったという事がバレてしまうのは確かに恥ずかしいのだが、それ以上に好きな異性について私も友達通しで語り合いたい。

 

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