第103話 嘘である
そうと決まれば早速東條様へ弟子入りの連絡をしよう。
そして私は思い立ったが吉日と言わんばかりにスマホを取り出すと東條様へ弟子入りの連絡をする。
このスマホの連絡先を知っているのが魔術師の中で私だけだというのも、ここだけの話かなり優越感を感じていたりもするのだが、それはもう仕方のない事であろう。
なんせ今や東條様は全世界の魔術師たちから、いい意味でも悪い意味でも注目の的であり、それは今やSNSで動画を何者かによって拡散されたお陰で魔術師たちだけではなく一般女性からも話題の中心となっているのである。
そんな、謎の男性魔術師の正体を知っているだけでなく連絡先を知っており、こうして気軽に連絡ができる仲というだけでもうみんなに自慢したいという欲求が押し寄せてくる。
こんなにも凄いお方が私の未来の旦那様なんだと。
そんなこんなで東條様との二人の幸せな未来を想像していると、さっそく東條様から『弟子入りはしなくてもいいけど練習には付き合っても良い』というような内容の連絡が返ってくるのであった。
◆
「観た? 昨日の動画っ!!」
「観た観たっ!! いったどんなお方なのでしょうか……っ!!」
ここは千葉のとある町の魔術師育成高等学校である。
ここ最近私の周りで聞く話の内容は例の男性魔術師の話ばかりである。
「綾香は反応薄いけど興味ないの? めっちゃカッコ良くない?」
そんな私にクラスメイトの一人が声をかけて来る。
「ん。 一応動画は観たけど、それくらい? 興味は無いわけではないけどそこまで熱狂的にはなれないかな……・」
「えぇーっ!? うそだぁっ!! ほらっ!! このスレット相手に斬撃を飛ばすシーンとかめっちゃカッコ良くないっ!? 刀型の魔術行使用媒体でまさかあれ程の威力がある遠距離攻撃魔術を行使できるだなんて、もう凄すぎるしカッコよすぎるじゃんっ!!」
「あー、はいはい。 確かに魔術師として世界上位ランカーレベルで凄いのは認めるけど、それ以上でも以下でもないと思うけど……?」
嘘である。
友達には『まるで気になっていない』風を装ってはいるものの、本当はこの友達でも私の部屋に飾ってある例の男性魔術師グッズ(手作り)を見れば間違いなく引くレベルで大好きである。
本当はあの輪の中に入って男性魔術師について何時間でも、何なら朝まで語っても良いし『どのシーンが一番カッコいいか』と議論もしたいのだが、初めて男性魔術師の話題を振られた時にちょっと背伸びして『魔術師としては凄いと思うけど異性としては気にならない』なんて答えてしまったのが運の尽きである。
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