第105話 復讐ができると思っていた



 そんな事を思っていたその時、私たちの町にけたたましくサイレンが鳴りスレットが町の外壁へ攻撃して中へと侵入してこようとしている事を告げる。


 そして私を含めて魔術師ランクがA級の生徒たちは待機部屋へ、それ以外は体育館へ避難へと移動する。


 その生徒たちに恐れや不安といった雰囲気は感じ取れず、逆に日常の一部といった雰囲気すら感じ取れてしまう。


 それは私も同じで、今日もどうせプロの魔術師さんたちがやっつけてくれるだろうし、私たちがサポートしに向かった場合であってもスレットの弱点である属性の魔術を行使できる者が選ばれる訳で、比較的簡単に討伐できる訳で。


実際に緊張感を感じていたのは魔術師ランクがA級になってから最初の一か月くらいのものである。


 それ以降は単なる日常の一部へと徐々になっていき、スレット討伐のサポートも作業という感覚になっていった。


 本当はこのような心持ではダメだろうし、ちゃんと緊張感を持って待機していなければならないのであろうが、慣れというのは良い意味でも悪い意味でも少なからずある訳で、そして慣れ始めた時に大抵新人はミスをするものである。






「ふーん、男性魔術師ねぇ……」

「いま魔術師界隈では彼の話ばかりで耳が腐りそうだぜっ」

「そういう理沙だって今その男性魔術師の話をしてるじゃないの」

「あ? うるせぇ殺すぞ美里……っ」

「おぉ怖い怖い……」

「……うるさいデス」


 ここは裏の組織であるアンノウンの修練場である。


 その修練場にて私と理沙が言い合い、帰国子女のリーシャが少し訛った話し方で私と理沙を窘める。


 そもそも私たちがここまでピリピリしているのは前回のテロを男性共が失敗したせいで私たちが暴れる日が後ろに倒れたからである。


 せっかくこの世界の魔術師たちに復讐ができると思っていただけに、あの馬鹿どもが失敗したせいで私たちが暴れる作戦は無くなり撤退すると聞いた時は怒りでどうにかなりそうであったほどだ。


 アレだけ自信満々に息巻いておいて失敗するとか、一発殴られても文句は言えないだろう。


「あら? 本当にいたわね。 珍しい組み合わせじゃない」


 そう言いながら霧島博士が修練場へとやって来るのだが、確かに私たちは同じ仲間ではあるものの一緒に練習をするのは、志は同じと言えども性格が会わないというのもある為稀である。


「霧島博士こそ、修練場に来るなんて珍しいですね」

「あぁ、ここに君たちがいると部下から聞いてな、丁度新しい魔術行使用媒体が完成したところだからついでに渡しておこうと思ってね」


 そんな私たちの前に珍しく霧島遥博士は修練場に来たかと思ったら、どうやら私たち用の新しい魔術行使用媒体が完成したと言うではないか。

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