第88話 どうしようかしらっ!?
「そ、そんな……が、我慢できるかしらっ!?」
「なに呆けているんだ? 置いていくぞ?」
「ま、待ってくださいなっ!!」
そして俺は何やら恐ろしい事を呟いている麗華を置いて先へ進む。
確かに、相手が麗華というのは少し、いやかなりアレなのだが見た目だけで言えばかなり美人の部類でありスタイルも良い。
そんな女性と二人で隣町までデートをするというのも、たまには良いではないか? とつい思ってしまう。
少し前までの俺であればまずそんな余裕すらなく、ただ魔獣や魔王の配下と生き死にのやり取りをすることしか考えていなかったのだからすごい違いであると言えよう。
そしてこういう何気ない日常がある世界こそ異世界で、俺が求めていた世界であり、これから俺がいなくなった異世界がこの世界のように気兼ねなく出かける事ができる世界のこれからなってくであろうし、そうあって欲しいものである。
出なければ俺や仲間たちが文字通り命を懸けて魔王を倒した意味がないし、文字通りアイツが犬死になってしまうではないか……。
「ど、どうしたのかしら? 私がまた東條様に何かしたかしら……?」
「すまん、少しだけ考え事をしていた」
「そうですか……」
「ほら、はぐれないように手をつないで行こうか?」
「は、はいっ!!」
どうやら俺は異世界の事を考えていたのが態度に出てしまっていたらしく、麗華が不安そうに話しかけてくるので気を取り直して俺はデートを再開するのであった。
◆
雑誌には『多少強引に誘った方が良いっ! 今週のあなたは無敵なので多少強引でも恋愛事は全て上手くいくでしょうっ!!』と書かれており、私はその項目を読んで内容を理解するまでに数分はかかった。
こ、ここここ、これは東條様と既成事実をつくる大チャンスなのではないかしらっ!?
もともと占いなどは信じていなかったし、それが東條様に良くみられるために勉強をし始めたファッション雑誌の余った数ページに掲載されている、明らかに年頃の女の子が盛り上がりそうな事しか書いていない時点で以前の私であれば『誰がこんなのに引っかかるのかしら?』と軽く見下してすらいた運勢占いコーナーのページにくぎ付けになっていた。
ど、どどどどどどどどうしようかしらっ!?
とりあえずママに相談しようかしらっ!?
いや、絶対に根掘り葉掘り聞かれるので絶対に嫌だっ!!
「おい、どうした? 麗華。 さっきから二階の自室に入ったかと思えば一階に下りて来て意味もなく冷蔵庫を開けたりを繰り返して……。 何か悩んでいる事があればお父さんが聞いてあげ──」
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