第86話 聞こえてんじゃねぇかよ
しかしながら
それに魔術行使用媒体アンチシステムが上手く作動して実際に軍に所属している魔術師レベルの魔術師を広範囲で無力化できたというデータが取れた事と、魔術行使用媒体を使わずとも無詠唱で魔術を行使できる謎の男性の存在を確認できたのはかなり大きい収穫であっただろう。
そう思う事によって自身の怒りの感情を抑えながら私はラボへと戻っていくのであった。
◆
「平和だ……」
あのテロリストたちからの襲撃から一週間が経った。
この一か月はスレットの襲撃もなく、当然テロリストの襲撃もなく実に平和な日常を過ごせたと思う。
「当り前ですね。 この町には東條様がいるのですから、むしろ他の街よりも安心安全であるのは間違いないでしょう」
そう、惜しむらくは俺の隣に麗華が居なければ……なのだが、それはもう文句を言ってもどうしようもないので考えないようにする。
考えてどうにかなるのであれば別なのだが、いくら考えてもどうにもならない事でいちいち考えては腹を立てる事ほど無駄な事はないだろ。
そういう場合は諦める事が肝心である。
しかしながら、解決できる瞬間を虎視眈々と待つという意味でもあるのだが。
「そう思ってもらえるのならば本望だな……」
「えぇ、それはもう。 なんせ私は東條様の未来の妻ですもの」
「……え?」
「…………」
「……え?」
「…………」
「何で無視をするんだ? 聞こえているだろう?」
「はて? 何の事でしょうか? ごめんなさい、聞こえませんでしたわ」
コ、コイツ……絶対聞こえていてやっているだろうこれっ!!
そして俺は『はいはいそうですね』という感じで麗華の話を流していくのだが、途中どうしても聞き流せない言葉が聞こえて来たので、流石の俺も会話の流れをぶった切って麗華へ聞き返すのだが、麗華はまるで都合のいい時だけ難聴になるハーレム主人公のような立ち回りをし始めるではないか。
「なぁ……そうやって外堀を埋めて行ってないよな? 俺の潜在意識にすり込もうとしていないよな?」
「気のせいでは?」
「ばっちり聞こえてんじゃねぇかよ」
「はて? 何の事でしょうか? 先ほどから少しおかしいんじゃないかしら、東條様」
「…………はぁ、まぁいいや。 それで、どうしても俺の助けが欲しいからって休日にこうして呼ばれてのこのこと来たわけだが、俺は何をすればいいんだ?」
「そうですね、一緒に隣町までついて来てほしいのだけれど?」
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