第85話 我が娘ながら化け物め



「その威勢はよろしいとは思うのだけれども、相手の力量もまともに測れない内は常に相手が自分よりも上だと思って置く事ね、焔さん。 それと、明日からは学業が終わった後にみっちりと後継ぎとして足る技量を得るまでみっちりとしごいて差し上げますので覚悟する事ですわ」

「……はぁっ……はぁっ」

「あら? あなたの顔の横に付いている両耳は飾りかしら?」

「わ、分かりましたわ……っ」

「よろしい。 それでは、修練場を片付けておいてちょうだい。 勿論、モップ掛けまでするのですよ」


 そしてお母様はそういうと、修練場から退室していく。


 あのあと、私とお母様は家の地下にある修練場で何回か模擬戦をしたのだけれども、全て私の惨敗であった。


 というよりも一戦目で負けた私が、負けた事を受け入れる事ができずに再戦を申し込んだのだが、言い換えれば幾度も再選を申し込み、その度に負け続けてようやっと私はお母様よりも弱い、それも相手にならないくらいに弱いという現実を受け入れる事ができたのである。


「……あのばばぁ、狐の皮を被って私を今まで欺いていたのですわね……はぁっ……はぁっ。 息一つ乱してなかった……化け物め……はぁっ、はぁっ……」


 悔しい……。


 お母様にボコボコにされた事もそうなのだが、相手の力量も見極める事も出来ずに喧嘩を売った事も、今までその事に気付かずに調子に乗っていた事もっ、何もかも全てがっ! 悔しいっ!!


 そして私は声を出して泣くのであった。





 修練場からでた瞬間、私は膝から崩れ落ちてしまった。


 まさか自分の娘がここまで強くなっていたとは予想外であった。


 自分で言っておいてなんだが、相手の力量を見極める事ができなかったのは私も同じだったようである。


「…………ありがとう」


 そんな私へ側仕えのメイドがタオルとスポーツドリンクが入ったペットボトルの容器を渡して来る。


「明日から現役時代のトレーニングへ、日課のトレーニングを戻します」

「……かしこまりました」


 まったく、我が娘ながら化け物め……。 将来が実に楽しみである。







МSメイル・スプレマシーに新しいメンバーを加えるから新たに組織メンバーを募って頂戴」

「かしこまりました」


 まったく、いったいどれだけのお金を我々アンノウンがМSメイル・スプレマシーに費やしたと思っているのか。


 男性至上主義を掲げるのは結構なのだが、投資した金額分の働きをしてもらわないとこちらとしても困るというものである。


 しかも、尻尾を巻いて逃げてきたМSメイル・スプレマシーのリーダーの第一声は言い訳と自身の保身であったのだから笑えない。

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