第75話 ここが天竺だったのか
「そ、それはいくら何でも横暴すぎるのではっ!? 確かに今まであなた方には多額の援助をしていただいた上で今回の作戦を失敗してしまったというのは言い訳のしようもございませんが、しかしながらイレギュラーがあったのも事実でございますっ!! 男性一人といえども魔術を使われては太刀打ちできないというのは致し方なかったかと……っ!!」
「だからさぁ、だれが言い訳をして良いっていった? 言ってねぇよなぁ? 殺されたくなかったらもう黙っとけよ? むしろ殺されないだけありがたいと思えよクソが……っ」
「ひぃ……っ!!」
いい加減しつこいので私は少しだけ殺気を込めて話すと、今までうるさかった男性は腰が抜けたのか急に崩れ落ちるとそのまま逃げるように部屋から出ていくではないか。
この程度の殺気でこれなのだから情けない。
なにが『男性にもう一度権利を』だ。
そんなんだからお前たち男性は女性から馬鹿にされるんだろうに、その事に気付けていない時点で初めから今回の作戦が失敗する事は決まっていたのかもしれない。
そう考えれば確かに悪いのは私だったのかもと、思えない事も無いのだが、それでもまさかここまで使えないとは思わないだろう。
「ったく、どうしてこうも男性という生き物は頭が悪く使えない奴ばかりなのだろうか……」
そう一人事を呟くと私は新しい作戦を考え始める。
「斎藤葵……私はお前を超える存在になり、あの日の屈辱を晴らしてみせよう……っ!」
◆
「いやぁぁぁああああっ!!! やぁやぁやぁっ!! やってくれたなぁ東條君っ!!」
「何ですかその無駄に高いテンションは……」
テロリストを、とりあえずできる奴だけ縛り上げ(テロリスト殲滅が今回のミッションではない為深追いはしなかった)斎藤博士がいる研究所へと翌日向かうと、待ちわびたとばかりに無駄に高いテンションで諸手を上げて俺を出迎えてくれるではないか。
「そりゃテンションも高くなるというものだっ!! 私は昨日から下を大洪水にしながら待っていたのだぞっ!! まったく、じらすのが上手い奴めっ!!」
「ちょっ、ふがっ!?」
そして俺は尚もテンションが高い斎藤博士を怪訝そうな目で見つめていると、急に視界が真っ暗になり、代わりにひと肌と柔らかな感触が顔いっぱいに広がって行くではないか。
いや、変に気付いていないような事を言うのは野暮というものだろう。
今俺の顔は斎藤博士の胸に包まれている。
あぁ、ここが天竺だったのか……。
「ちょっとっ!! 離れなさいよっ! いくら何でも未成年相手にそれはセクハラ通り越して犯罪だと思うのだけれどっ!!」
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