第76話 最高でした



「そうは言っても麗華よ。 あんな事をされたら抱き着かなければこの感情を抑え込むのは無理であろうっ!! 麗華も見たであろうっ!! しかも至近距離でっ!! 魔術行使用媒体を使わず、しかも無詠唱で魔術を行使する東條君の姿をっ!! 魔術をっ!! しかも魔術行使用媒体を使わず無詠唱で行使したその魔術が攻撃として十分に使える威力であったのだからなっ!! そんな事をされちゃぁ私の下半身は当然大洪水だし、抱き着かないとこの興奮は収まらないのだっ!!」

「何が『収まらないのだっ!!』よっ! 言いたいことは分かるけれども最後の件のせいでただの痴女じゃない」

「あっ!! こらっ!! 中島っ!! 私を東條君から離そうとするでないっ!! それでも私の助手かっ!?」

「はいはい。 斎藤博士の助手だから私はこうして東條君から斎藤博士を引きはがしているんでしょっ!」


 そして天竺は中島助手さんのせいで俺の顔面から離れていってしまう。


 しかしながら、実に柔らかく、そして温かな天竺であったな……。


 名残惜しいがそれが表情に出ないように意識を強く持ち『別に名残惜しいとか思っていないですよ? いうて所詮は脂肪でしょう? 僕には何が良いのか分かりませんね』という表情でこの場は切り抜ける事にする。


 もし万が一に名残惜しいと思っている事がバレたらと想像しただけで頭が痛くなるような未来が容易に想像できるし、そもそも今日するべき話が進まないだろう。


「と、東條様……」

「ん? なんだ、麗華?」

「も、もし……その、顔に胸をつけるのが好きというのであれば、いつでも言ってくれてかまわないわよ……? これでも大きさや形に張りと弾力には自信があるの……っ!」

「…………な、何を言っているんだ? そもそも何故それをして俺が喜ぶと思ったのか?」

「あら……違ったかしら? 斎藤博士の胸で顔が埋まっていた時の東條様の口元がにやけていたように見えたので……」

「…………気のせいだ……」

「で、ですが──」

「気のせいだ……っ!」

「は、はいっ。 すみません」


 あ、危なかった。


 急に何を言い出すかと思えばまさかの顔に胸を押し付けても良いという内容であり、俺は反射的に『お願いします なんなら今すぐに。 そして毎日』と言いかけたのを寸前の所で止める事が出来た俺を誰か褒めて欲しい。


「どうだったかね? 私のオッパイはっ!?」

「どうでも良いでしょ、そんな事……(最高でしたっ!!)」

「……そうか。 まぁ、私のオッパイの感想は後で原稿用紙四枚に書いてもらおうとしてだ、教えてもらおうか……っ!!」

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