第73話 私が受けた屈辱
その瞬間テロリストの男性も、麗華も、大槌千里、そして少し離れたところで戦闘を止めて俺たちを見ていたテロリストの男性と的場依鶴までもが信じられないと言いたげな表情で俺の事を見ていた。
「何をそんなに驚いている?」
「…………はぁっ!? 魔術行使用媒体を使えなくしている状況で魔術を、しかも魔術行使用媒体を使用せずに無詠唱で魔術を行使……お前、いったいどうやって魔術を行使したんだっ!! そもそもお前は男性であろがぁ~っ!! まだ段位一であれば分からないでもないが、男性であるお前がなんで魔術を行使してんだよぉ~っ!! おかしいだろ普通に考えてよぉっ!!」
そうテロリストの男性が叫ぶように言うと、周囲にいた者たちの思っていた事は同じだったらしく、俺の答えを固唾をのんで待っているのが見て取れる。
「いや、普通に考えれば子供でも分かる事だろう? そもそも魔術は魔術行使用媒体を使わずとも行使する事ができる。 そして俺はそこら辺の女性たちよりも魔力保有量が多い。 ただそれだけだ」
そして俺はそういうとテロリストの男性まで近づいていくと囁く。
「俺が言っている意味が分からない程頭が悪いわけじゃないんだろう? 魔術行使用媒体を使えなくしたところで魔術は行使できんだよ。 無駄な努力、お疲れさん」
「ふ…………ふざけんあぁぁぁあああああっ!!」
「うるせぇよ」
そして俺は殴りかかって来たテロリストの男性を、魔術を無詠唱で行使して黙らせるのであった。
◆
「あぁぁぁあああああっ!!!!」
「ほ、焔お嬢様っ!! 危のうございますっ!!」
「うるさいわねっ!! ほっといて頂戴っ!!」
これほど屈辱的な事が今まであっただろうか?
私は昨日の出来事をニュースとして放送している番組を映しているテレビに向かって怒りの感情のまま花瓶を投げつける。
「あなたには一生分からないでしょうねっ!! 昨日私が受けた屈辱をっ!!」
魔術師として育てられてきた私が受けた屈辱など、たかが使用人が分かる筈がない。
それほどまでに私は『男性に助けられた』という事実は衝撃的であった。
しかもその軍服のような服に黒い仮面を被っている男性は、私を助けただけではなく、他の現場では魔術を行使していたというではないか。
その事を肯定するかのように画面の割れたテレビが、長距離からの撮影の為画質こそ悪いものの確かに魔術行使用媒体を使わずに魔術を行使している映像が映しだされているではないか。
昨日からテレビを付ければずっとこの光景が流れているのだから頭がおかしくなってしまいそうになる。
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