第68話 ダサすぎるな



 そうとも知らずにこのバカは私に攻撃が通ったと思って舞い上がっているのだから笑いそうになるのを必死に堪えて耐え凌ぐ。


 そもそもの話この男性と私とでは実戦経験の差が余りにも違い過ぎる為、防御にだけ集中すれば良いだけであるのならば、スレットよりも攻撃スピードが遅く、攻撃できる箇所が何十カ所とあるタイプもいるスレットとは違い足と腕の四本だけ。


 しかも同じ人間である以上どのような動きをするのか分からないスレットと違い始めから相手の攻撃が当たる範囲や攻撃方法が殴る蹴る膝肘掴む頭突き足払いがオーソドックスな攻撃方法だろうと予測できるからこそ、こちらから攻撃する必要が無くリソースを全て防御に回せるのであれば、この男性相手では何時間でも決定打を貰わずに立ち回れる自信がある。


 それだけこの男性とは実戦経験の差が実力として現れている。


 恐らく今までは格闘技をスポーツの延長線上としての練習しかしてこなかったのだろう。


 格闘技未経験者の女性であれば魔術行使用媒体の使えないこの状況下で圧倒できたかも知れないのだが、それが素人の限界だろう。


 結局魔術師と一般人ではそれだけの差があるという事なのだ。


 むしろ殺し合いにも関わらず相手を殺して自分が生き残るのではなく、プライドを最優先にしている時点で、私の王子様が助けに来なかったとしてもどの道このテロ行為は失敗であったと言えよう。


「おい、お前。 無抵抗の人間に何をしている?」


 そして私は蹴られた痛みで苦しんでいるように蹲っているその時、あの日からずっと聞きたかったその声が聞こえて来る。


 あぁ、このままだと耳が妊娠しちゃいそうです……っ!


「あ? 誰だぁ、お前? てか仮面を被っていて顔が見えないが……声からしてお前まさか男なのか? 男だったら俺達が何をしているのか見れば分かるだろう? 復讐だよぉ~っ!! 今まで虐げられてきたからねぇ~」

「……それで魔術行使用媒体を使えなくして襲っているんだから救えないしダサすぎるな」

「あ? なんだお前? もう一回言ってみろよ、なぁ~?」

「何度でも言ってやるよ。 やっている事がだせぇって言ってんだよ。 魔術行使用媒体を使えなくしているにも関わらず銃などの武器を使うでもなく、肉弾戦で戦っている所を見ると『まともに戦ったら女に勝てないから魔術行使用媒体は使えなくするけど、肥大したプライドが女に負けているから魔術行使用媒体を使えなくしているという事実を認めたくないからこそ肉弾戦で勝つ事によってそのくだらねぇプライドを守ろうとしてんだろ?」

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