第67話 そんな事は決まっている


「やっと俺の攻撃が当たったか……。 いくら防戦一方といえども反撃手段が無ければいずれ俺の攻撃は喰らってしまうよなぁ~っ!! どうせ嫌な事が先に延びるだけなんだから初めから抵抗せずにさっさとこの俺にボコられれば良かったんだよなぁ~っ!! ったく、手間ぁ取らせやがってからにっ!!」


 そして私は相手の、拳で繰り出してきた鳩尾への一撃を貰って悶絶している所に、さらに追撃とばかりに思いっきり蹴り飛ばされてしまうではないか。


 そして私は心の中で『計画通り』とほくそ笑む。


 そもそも私コイツの攻撃など私からすれば全然痛くも痒くもない事は、今まで捌いて来た時に分かりきっていた事である。


 コイツ程度の打撃力であれば、今残っている魔力のお陰で半時間は殆どダメージを感じないだろう。


 他の人は体内の魔力を使って一瞬だけ瞬発力を上げたり、筋力を上げたりすることができるのだが、私は一瞬だけ防御力を高める事ができるのだ。


 だからこそ盾役も兼ねて大槌の魔術行使用媒体を使っているし、私もこの大槌が一番しっくりくる武器だとも思っている。


 その為相手の攻撃が当たる瞬間だけ防御力を上げれば、男性の攻撃など全く効かないのである。


 そもそもテロを行うのであれば刀や銃など旧時代の武器を持ってこいという話なのだが、どうせ男性たちのくだらないプライドか何かなのであろうが『身体一つで女性を圧倒して倒したい』『魔術行使用媒体が使えなければ身体能力的に優れているのは男性であり、故に肉弾戦に持ち込めば勝てるとでも思っていたのであろう。


 実に浅はかな考えであるとしか言えない。


 そもそもこれを失敗したらこいつらの作戦やこれからの未来予想図は全て無駄になるのである。


 だったら何が何でも勝たなければならず、勝つためにはそんなくだらないちっぽけなプライドなど捨ててこなければいけなかったのである。


 しかしながら、そんな状況であるにも関わらず何故私はわざと相手の技を喰らってあげたのかと言うと、そんな事は決まっている。


 それは『私がピンチになると私の王子様が助けに来てくれるから』であり、それは言い換えると『また私の王子様に会う事ができる』という事である。


 その為私は全くもってダメージなど喰らっておらず、当然ダメージを喰らっていないので痛くも痒くも無いのだが『まるでか弱い乙女が暴力を受けてしまってピンチっ!!』と思えるように最初の鳩尾への一撃を敢えて捌くことはせず痛がってみせ、そして相手の蹴りが凄いように見せる為に、自分から蹴られた方向へ吹き飛んでいく。

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