第69話 だれだこの雌豚はぁぁぁあっ!


 そして私の王子様は、私がピンチの時に颯爽と現れたかと思うと、私を庇うように敵と私の間に入ると、正論で打ち負かしてくれるではないか。


 それと共に、私がこの男性の事をダメだと判断した理由とほぼほぼ同じ事を私の・・王子様が男性に向かって言ってくれて物凄くスカッとしたのだが、それは視点を変えると『お前と一緒になりたい』という事であり、さらに言うならば『お前と結婚したい』という事ではなかろうか?


 いや、そうに違いない。


 あの瞬間、確かに私の・・王子様と心が通ったし、なんならテレパシーで互いの思いを伝えあったのだ。


 あぁ、お母さんお父さん。 私こと大槌千里は結婚しますっ!!


 結婚式はいつにしようか? 式場はどこにしようか? 子供は三人は最低でも欲しい。 あぁ、このゴタゴタが終わった後にZシィーとぴよぴよ倶楽部を買って帰らなきゃ……ですねっ!!


「ちょ、ちょっと早いわよっ!! 少しは私のスピードに合わせてくれても良いんじゃないかしら?」


 そんな約束された将来について、幸せな妄想に浸っていると私の・・王子様が来ているカッコいい服装と同じような軍服調のゴスロリっぽい服を着た女性が馴れ馴れしく私の・・王子様に話しかけてくるではないかっ!!


「だれだこの雌豚はぁぁぁあっ!!」

「……ん?」

「……へ?」

「……あ?」


 その、私の・・王子様と親し気に話す雌豚を見た私は、気が付いたら私は叫んでいたらしく、その瞬間空気が凍り、時間が確かに止まったような感覚になる。


 いや、確かにあの瞬間空気は凍り、時間は止まっていた。


「…………や、何でもないです。 そのまま先ほどの事は無かった事にしてどうぞ続けてください」

「お、おう……っ」


 危ない危ない。


 服装が似ている事で思わず『コーデ合わせかっ!?』と思ってしまい思わず嫉妬(勿論、親しく話していた事についても嫉妬している)してしまったのだが、よくよく考えたら私の・・王子様が私と言う伴侶がいるにも関わらずそんな不義理な事をする訳がない。


 少し考えれば分かった事なのに私ったらつい叫んでしまった。 けれどもそれは私の・・王子様の事を本気で愛しているからこそという事でもあるので、あの場面で叫んでしまうのは仕方がない事だろう。


 そして、きっと私の・・王子様も私が叫んでしまった理由を『それだけ愛されているからこそ』だという事に気付いている事だろう。


 だって私たちは以心伝心、心と心、想いと想いが通じ合った仲なんですもの……っ!


 それに、今思えば似たような服という事は同じ職場か何かなのだろう。 旦那様の職場の女性一人ひとりにいちいち嫉妬してはキリが無いですしね。

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