第61話 カッコいいデザインじゃないか


 ちなみにどのような軍服かというと、ネット検索で『軍服 カッコいい』で検索して出てきた画像をアニメ風に改造した衣装と言えば良いだろうか?


 カッコいい軍服で止まっていればまだ受け入れる事はできたのかもしれないのだが、そこにアニメッぽさが加わる事により絶妙に中二病感を醸し出しているのである。


 アニメで見る分には良いがリアルでこれを着るのはコスプレイベントなどでないと浮いてしまうような、そんな衣装である。


「もう一度聞くけど、他に衣装は無いんすかね? なんなら今からウニクロで買ってこようか?」


 確かに俺も中二病を発症していた時はこういうごちゃごちゃした衣装やデザインをカッコいいと思っていたのだが、年を取る度にシンプルなデザインの方がカッコいいと思えるように変化していったのだ。


 そう、例えるのならば小学生の時にカッコいいと思っていたドラゴンのアニメイラストが描かれた習字道具入れを買って、高校では流石に恥ずかしくて使えなくなるような、そして今俺が今抱いている羞恥心はそのドラゴンのアニメイラストが描かれた習字道具入れを高校でも使えと言われているような感覚に近いと言えば分かりやすいだろうか?


 確かに、カッコいい。


 その事は否定はしないが、この年でこれを着るのはちょっと勇気が必要かなぁ……。


「これを着てくれないと、ぽろっと上に話しちゃうかも……」

「てか、そもそも俺が手伝う必要は無いですよね? 最悪この町から出て行っても良いんだが?」

「もしこれを着てテロリストたちを倒してくれたのならば『かいりきのチザードン』をプレゼント──」

「行かせていただきますっ!! それに、良く見れば一周回ってとてもカッコよく見えてきましたっ!!」


 とは思ったのだけれども、よくよく見れば男心をくすぐるカッコいいデザインじゃぁないか。


 それに、俺が助けにいかないと助けられたはずの魔術師たちが助からないかもしれないしな。


 決して三十年前に発売されたバケモンのトレーディングカードゲーム、その初版しか封入していないチザードンの、かいりきと書かれたエラーカードが欲しいからではない。


 純粋にこの軍服をカッコいいと思えたし、手の届く範囲で助けられる命があれば助けたいと思ったからである。


 とりあえずさっさと終わらして、ついでにかいりきのチザードンを斎藤博士から貰い、家で存分に鑑賞しようではないかっ!!


「麗華はまだかっ?」

 

 そして俺は、そうと決まれば素早く軍服に着替えて麗華を待つ。


「はい、ここに……。 東條様」

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