第62話 向こうの世界では普通にいる


 そう俺が麗華を呼ぶと、既に着替えて準備をしていたのか麗華がシュタッと、どこからともなく現れるではないか。


 その麗華は膝をつき、キラッキラした目で俺の顔を上目づかいで見つめてくるその姿は大型犬の様なのだが、着ている服は『軍服にゴスロリ系を足したような衣装』を着ているではないか。


 それはまるでネット検索で『軍服 女性 カッコいい ゴスロリ』で検索すると大量に出てくるような衣装であった。


 それに麗華の、白銀に輝く刀型魔術行使用媒体を合わせたところを想像すると、悔しいのだが不覚にもカッコいいと思ってしまう。


 斎藤博士の価値観に毒されちゃだめだ……斎藤博士の価値観に毒されちゃだめだ……斎藤博士の価値観に毒されちゃだめだ……っ!

 

 これはダサい……これはダサい……これはダサい……っ!


 よし、なんとか持ちこたえた。


 こういう中二病感をくすぐるような衣装の恐ろしいところは『気を抜くとカッコいいと思えてくる』という事である。


「では、行こうか」

「はいっ!!」


 こうなればこの状況に慣れる前に終わらすのが最適解なのは間違いないため、麗華の準備ができている事を確認した俺はさっそく現場に向かう事にした。





「あ? 誰だ、お前?」

「テロリストに名乗る名などあるとでも思っているのか? それは残念な頭の持ち主だな。 お前らのようなテロリストはただやられて無駄死にするか、革命を成功させるかの二択しかないだろう? まさかそんな覚悟も無くテロ行為を起こしたとでも言うのか?」

「それもそうだな……今から殺す奴の名前を聞いたところで意味がねぇ──」

「死ねぇっ!!」

「──うぉぅっ!?」

「ちっ、避けるんじゃねぇよ……っ」


 とりあえず魔術師の女性と戦っているそれっぽい奴を見つけたので間に入って某アニメキャラよろしく『悪・即・斬』の気持ちで、即殺そうとしたのだが避けられてしまったようである。


 こちらがどのような気分で今この場にいるとも知らないで……。


「ったく、我慢できない男はモテないぜ?」

「…………お前はモテる為に殺し合いをしているのか? だったらとんだお花畑な思考の持ち主だな。 さぞ弱かろう」

「あ? どうせお前は女性の影に隠れてぬくぬく生きてきたんだろう? そんな奴よりこの俺が弱いわけがねぇだろうがよっ!!」

「そう思うのは勝手だが、俺はお前とはくぐって来た修羅場の数が違うんだよ。 それこそ魔王を守護している凶悪な魔物の中には、魔力を行使できない結界を行使してくる魔物など、向こうの世界では普通にいるんだよ。 それがどういう意味か理解できるか?」


 

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