第53話 救いようのない馬鹿ね


「おぉおぉ怖い顔をしてるじゃねぇか……」

「当り前だわ。 あなたたちのやった事は、下手すれば人が死んでいてもおかしくない事をしたのよ?」

「お前たち魔術師は流石に死なねぇとは思っていたが、運転手はもしかしたら死んでいたかもと思っていたんだがな……死ねば良かったのにっ」


 そして目の前にいる男性三名の内、真ん中にいる男性が話しかけてくるのだが、その内容は明らかに私たちへ喧嘩を売っているとしか思えない内容であった。


「男性であるあなたが、学生とはいえAランクである私たち魔術師に勝てるとでも思っているのかしら? もしそうだとしたら滑稽ね……。 そして、あまりにも無知すぎるとしか言えない、稚拙で計画性のない犯行であると言わざるを得ない……っ!」

「…………そうだよなぁ、お前たち女どもはいつもそうだ。 そうやって男性を見下し、バカにしてくる。 何かあれば『私たち女性が居なければとっくの昔にスレットに滅ぼされている癖に』だの『私たち女性に生かされている寄生虫の癖に偉そうな態度を取るな』だの……もう聞き飽きたんだよ。 俺たち男性を馬鹿にする言葉も、そして今お前が俺に向けているような、俺たち男子を馬鹿にしたような表情や目線もっ!!」

「そうね、隅っこで目立たずひっそりと暮らしている分には、私も何も言わないわ。 でも、あなたのような馬鹿はそんな言葉を言われても、そして見下されても仕方がないのではなくて?」

「何が仕方がないだっ! ふざけやがってっ!!」


 そして、私たちに話かけてきた男性は、まさに暴論を叫び、私が軽く否定してやると簡単に激昂して、手に持っている刀を振りかぶり、叫びながら走ってくるではないか。


 そのスピードたるや、身体強化した平均的な女性の速度と比べると、どう見ても遅すぎて欠伸が出てしまいそうなほどの速度である。


 私たちに喧嘩を売って来たのだ。


 もう少しこう、何かあるだろうと踏んでいたのだが、まさか私たち魔術師に対して何の対策もせず突っ込んでくるとは、誰が想像できようか。


 拍子抜けも良いところである。


「まさか、そんなただの刀で私たち魔術師に喧嘩を売って来たのだとすれば、救いようのない馬鹿ね……」


 そして私は叫びながら走って来る馬鹿を眺めながら余裕をもって魔術行使用媒体を発動しようとして気付く。


「あれ……?」

「やっと気づいたか? 馬鹿は俺たちではなくて、まんまと罠にハマったお前たちだったようだなっ!!」


 そして、男性は私が魔術行使用媒体を使えない事に気付いたのを確認すると『ギャハハハハハッ!!』と笑い、馬鹿にしながら刀を振り回してくるのではないか。

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