第51話 武器を持って行けば良い


 山梔子が感じているように、恐らく他の魔術師、または学生の魔術師候補の者たちは今のこの変化に気付いているだろう。


 それくらい、明らかに今までと違っているのである。


 それが、何か嫌な予感がしてならないのだが、その嫌な予感が当たるとも限らない為私は極力考えないようにしている。


「悪い兆候じゃなければ良いのだけれども、スレットの事は今現在分かっている事よりも分からない事の方が多い為、悪い兆候なのか、たまたま普段と違うのが重なっているだけなのか分からないわね。 いくら考えても私たちは専門外なので、スレットを研究している専門の人に任せましょう」

「…………んっ」


 数十年前、スレットという化け物が現れてその時暮らしていた人々から平穏が奪われてしまったように、いつ私たちの平穏が奪われてしまうのか分からない。


 だからこそ私たち魔術師は平穏が奪われないように命を懸けてスレットと戦い守っているのだ。


 そう思えば思う程、安全な場所でぬくぬくと生きている男性たちに腹が立ってくるというものである。


 そしてぬくぬくと生きているからこそSNSで男子たちは簡単に魔術師や女性たちへある事無い事誹謗中傷を言うのであろう。


 文句を言うのであれば自分でスレットを倒しに前戦に、旧時代の魔力を使用しない武器を持って行けば良いのである。


 それをせず、女性である魔術師に今の安全を守ってもらっているにも関わらず、何故あんな汚い言葉を投げかける事ができるのか私には理解ができない。


 男性たちは私達女性に守られているというのを胸に刻み、日々感謝し生きていくべきであるし、そうすれば女性へ反発的な態度を取るという事も無くなるだろう。


 しかしながら現状はそういう男性は一定数存在し、それだけではなく女性までそういう思考のものが見受けられるのだから頭が痛い。


「あ、危ないっ!?」

「きゃぁっ!?」

「うおっ!?」

「あうっ!?」


 そんな事を送迎車の中で考えながら学園へと着くのを待っていると、送迎車は運転手の叫び声と共に急ブレーキをかけたかと思うと何かから避けるようにハンドルを切っていたらしく、その勢いを殺しきれずに送迎車は横へ倒れて道路を数メートル滑って止まる。


「だ、大丈夫ですかっ!?」

「…………わ、私たちは大丈夫みたいだけれど、いったい何があったんですの?」


 運転手の女性は頭から血をながらも私達のケガの有無を聞いてくるので、一応学生とは言えAランクの魔術師であるのでこの程度ではケガをする事は無いのだが万が一という事も考えられる為、一度他二人を確認した上で大丈夫である事を告げる。

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