第48話 世界がひっくり返る
そして、そんなこんなでギスギスした空気の中小一時間が経った頃、待機室に増援を命令する事が決まった事を告げる赤いランプが光り、回り始める。
いったい誰が呼ばれるのか、待機室にいる皆が聞き逃すまいと固唾をのんで出動チームを呼ぶアナウンスを待つ。
『敵の数があまりにも多くスタンピードが起こっている可能性が非常に高く、今現在戦ってくれている魔術師の魔力があと半刻ほどで枯渇すると思われる。 そして敵も先ほど申したように多いため今回は全員増援として現場に出動してくれ。 目的の場所は──』
そして選ばれた増援チームは、まさかのここにいる全員であった。
「……国家魔術師を目指す事を止めたのはこの際もうどうでも良いのですけれども、私たちチームの邪魔だけはしないでいただけるかしら?」
「当たり前です。 むしろ私は貴女が足を引っ張らないか心配なほどよ」
◆
どうやらスレットの数が想像以上に多いらしく魔術師たちはてこずっているようである。
これは、運が一気に俺たちの方へ傾いて来たといって良いだろう。
もしこのままスレットの大群を処理できない場合は控えにいる魔術師たちはスレットのスタンピードを止める為に総動員するはずである。
そうなると、今回の任務を終えた時はこの地区にいる魔術師全員が魔力と体力、そして精神力を消費した状態で帰ってくるという事である。
いよいよだ。
これは間違いなく世界がひっくり返る。
そう感じているのは俺だけではなく、ここにいる全員がそう思っているようで、少し前にスレットが現れたイレギュラーが起こった時に下がり始めていた士気は、今や限界値まで上がりきっていると言って良いだろう。
士気が上がりすぎて、いざ作戦を開始した時に自分をコントロールできず、更に命令が耳に入らずに深追いし過ぎないか心配な程である。
しかしながらここにいる者は今日この日の為に、文字通り血反吐を吐くほどの訓練に耐え抜いてきた猛者たちである。
その訓練に耐えられたのも全ては男性の地位向上の為である。
「ボス……二時の方角を見てください」
「…………魔術師の増援のようだな。 そして、予想していた通り控えに置いていた魔術師たちも全員出動させているようだな……」
今のところ全てが面白いくらいに上手くいきすぎており、逆に恐ろしいと思えてくる程である。
さぁ、世界がひっくり返り、元に戻るまであと少しである。
◆
「確かに、氷室麗華は先ほど自分で言っていたようにスレットの討伐に手を抜いている訳ではないようね……」
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