第44話 馬鹿と鋏は使いよう
「おい、そう怒るなよ」
「…………す、すまん」
これから作戦を決行するという時にスレットが出てきてしまった為、感情が高ぶっていたところに冷や水をかけられたような感じになってしまったのであろう。
部下の一人がその苛立ちを隠そうともせずに口にするの。
これを放っておいたら士気の低下にもなりかねないので声をかけて諫めてやる。
こういう予期せぬイレギュラーが起こった時に部下の精神的なケアが出来ない者は上に立つ資格は無いだろうし、そういうのが頭の部隊は最悪全滅してしまう可能性だってある。
そう、あの日の俺がいた部隊があぁだったように。
そして、今スレットが現れた事は何も悪い事ではない。
「いや、これからって時にイレギュラーな事が起こったんだ。 そういう感情になるのも仕方がないから、次気を付けてくれればそれでいい。 冷静な判断力を無くさず、今できる最善な方法を考える癖は大事だぞ」
それに、と俺は言葉を続ける。
「今スレットが現れてくれたおかげで少なくとも町民には余裕がなくなっているだろうし、魔術師たちがスレットを倒した時は町民だけではなく魔術師たちも間違いなく油断しているはずだ。 そして俺たちは予定を変更してそこを叩けばいい。 そう考えればイレギュラーではあったもののスレットが現れた事も、そう悪い事ではないと思わないか?」
もし、これで当初の計画と比べて失敗してしまう確率が跳ね上がってしまったのならば別の日に予定を変更していた可能性だってあっただろう。
しかしながら神が味方したのはクソったれな女どもではなく、俺たち男側だったようである。
やはり、神も今女性たちがデカい顔でのさばっている現状を良く思っていないということなのだろう。
「…………なるほど。 予定は狂うのだがこの狂い方はマイナスではなくプラスに働くという事か……。 確かに言われて見ればそうだな……。 はは……っ、さっきまでスレットに腹立っていたのが嘘のように感謝したくなってきたぜっ!!」
そしてどうやら部下は俺の説明に納得してくれたようである。
こいつはバカだが、直ぐに切り替える事ができるのは長所であろう。
そのお陰か、なんだかんだで他の者たちも予期せぬスレットの襲撃に苛立ちを隠せないでいたのが、今ではその苛立ちは霧散しており、当初よりもやる気が漲っている事が彼らの表情から窺える事ができる。
そういう面でもこいつは利用価値があるともいえよう。
馬鹿と鋏は使いようとはよく言ったものである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます