第45話 喋る筋肉
ただ、女性たちへの鉄槌の時間が遅れてしまう事だけは少しだけ残念に思うのだが、待たされた分だけ楽しさもひとしおだろう。
おれはそう思う事にして新たに作戦の時間を練り直し部下に告げるのであった。
◆
スレットが現れたため、私はいつも通り待機部屋へと向かう。
この待機部屋なのだが、学園に在籍している魔術師ランクA以上の実力を持つ生徒は、万が一討伐に向かっている現役の魔術師たちでは対処できないスレットが現れた時、そのスレットの苦手であると分析された魔術を行使できる魔術師を送る為の増援要員として待機する部屋である。
そうは言っても私がこの学園に入学して今まで片手で数える程度しかないのだけれども……。
本音を言うともっと上の方々に私という存在をアピールしたい為、もう少し増援される頻度が上がっても良いのにと思ってしまう。
「あら、氷室麗華さんはいらっしゃらないようね……」
「見れば分かるだろうっ! まだ麗華は来ていないぞっ!!」
そんな事を思いながら、既に見慣れたコンクリート打ちっぱなしの壁の待機室へと入ると、珍しい事に氷室麗華がいなかった事に気付いた私は、思わず口に出てしまったようである。
こないだの『男性に助けられる』という、あまりにも不甲斐ない結果を残し、日本だけではなく世界の魔術師の顔に泥を塗った氷室麗華に対して一言言ってやろうと思っていた私は少しだけ拍子抜けしてしまう。
しかしながら氷室麗華が今日登校している事は知っているので待機室へ来ないという事はないだろう。 その時に言えばいい。
それにしても、この氷室麗華がリーダーとして所属しているチームの一員である的場依鶴という女性はどうしてこうもガサツな態度にもの言いなのだろうか。
まるで男性のようなその態度と言動に、彼女を視界に入れるだけでここ最近は苛立ちを覚え始めてしまっている。
その事を何度か注意した事はあったのだが『私が表現したいようにして何が悪いんだ? そういうお前だってしたいように自分を態度や言動で表現して過ごしているんだろう? 私だけじゃない。 みんなだってそうだ。 だから態度や言動を改めろと言われる意味が分からないね』と返されて終わりである。
こういう頭の悪い人間に割く時間も無ければ、腹を立てるのもストレスになる為最低限極力関わらないようにしている。
きっと的場依鶴は頭の中が筋肉でできている為、私が何を言ったところで通じないだろう。
今では『喋る筋肉』と思うようにしているし、そう思えばいちいち腹も立たない。
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