第6話可愛いものである


 流石に両親に迷惑をかけるような行為は、それが間接的な行為であろうとも俺は許すような事はしない。


 そこを蔑ろにしてしまって毎日俺の私物を壊されたりしたらたまったものではないからな。


 しかしながら学園側も過去の炎上で痛い目を見たからこそそこらへんはしっかりと女子生徒達へ教育が行き届いているようで、今のところ物を壊されたり隠されたりといった事をされていないのは、力をできるだけ隠したいと思っている俺からしても助かっている。


 そして以前の俺からすれば苦痛な数時間が、そして今の俺からすれば実に平穏な数時間を過ごし、現国と歴史の授業を終え、次は科学であり、以前の俺が一番嫌いだった授業である。


 何故科学が嫌いであったかというと『実技』があるからであり、ここでいう実技とは模擬戦であるからである。


 ちなみに何で魔術ではなく科学なのかという、この世界での能力を行使する仕組みが関係している。


 端的に言うと魔力を行使する為の媒体が無いとこの世界では魔術を行使できず、その媒体は科学の技術によって作られているからである。


 その為この世界での軍事力はこの媒体と、媒体を行使する人間、その両方の差で決まる。


 より高精度高威力の魔術が行使できる媒体に、魔力保有量が多く戦闘センスと技術が高い人間を育成する事がそのまま軍事力へと直結するわけである。


 だからこそ各国は魔術師の育成に力を入れている訳である。


 そしてここ東京魔術大学附属魔術技術高等学園は魔術師を育成し優秀な魔術師を見つけ出す場所でもあるわけで、こんな場所で俺が力を使えばどうなるか火を見るよりも明らかだろう。


 だからこそ俺がお灸を据えなければならないような事をされた場合はしっかりと口留めをさせてもらう。


 兵器として駆り出されたくないので当たり前だろう。


 そんな事を思いながら俺は室内修練場へと制服のまま向かう。


 そこにはテーブルが一列に並べられており、その上には拳銃型の、良く見るスタンダードな媒体が置かれ、十メートル程離れた場所には人型や魔獣型をした的が置かれていた。


「ったく、男が私達女を待たせてんじゃないわよ」

「ほんと、守られている分際で何様なんだか」

「ちょっと魔力が多いからといっても所詮男は男。 女には敵わないと何で分からないのかしら」


 そして俺が室内修練場へと入るとそんなひそひそ声が聞こえて来る。


 まぁ、言われた所で死ぬわけではないので異世界での生活(魔獣や魔族からの攻撃)と比べると可愛いものである。

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