第5話何の問題も無い

 女性から下に見られるというのは、俺が異世界に行く前は確かにストレスに感じていたし、その理不尽な態度をとってくる相手に対して自分では何もできないという現状が、さらに感じるストレスを跳ね上げていた。


 しかしながら異世界へ行って三十年間過ごした事によって得た経験によって『女性から理不尽な態度をされる』という行為に関しては何も思わなくなった。


 それこそ俺が女性から理不尽な事をされても死ぬわけではない上に、その三十年間魔王を倒すために死に物狂いで強さを求めた結果、ここに在籍している誰よりも強いという自覚がある為、最悪暴力を振るわれても勝てるという心の余裕ができているのも確かである。


 それに東京魔術大学の附属高校だからと言って必ず東京魔術大学へと進学しなければならないという訳ではないのだ。


 であれば高校卒業と同時に東京魔術大学とは無関係の大学、又は就職活動をすれば良いだけであり、言い換えればたった三年間我慢すればこの環境ともおさらばできるのである。


 俺からすればいきなり訳も分からず異世界へと飛ばされて勇者だから世界を救えと半ば強制的に無理難題を吹っ掛けられ、いつこの地獄が終わるのかすら分からない戦いの日々を三十年間も過ごして来た経験をして来たわけで、終わりが見える上に殺すか死ぬかの戦いをする必要も無い、しかも三年間という短い期間であるという事実は『その程度』という認識になってしまうのは仕方のないことだろう。


 因みに俺は今年から高校二生である為正確にはあと二年間我慢すればいいだけである。


 もし俺が異世界での経験がないままであったのならば、その二年間ですらこの環境に耐えられずに不登校になっていたかもしれないと思うと、異世界での経験も無駄では無かったのかな? と思えてくる。


 そんなこんなで、今の俺からすれば平和で平穏な学園生活を終えて下校の時間となる。


 確かに今日一日過ごしてみて男性であるというだけでバカにするような言動や態度、たまにわざと肩をぶつけてくるなどの暴力を振るわれた事もあったのだが、所詮は学生程度のするようなものである。


 バカにするような言動や態度は、それで死ぬわけではないと思えばなんとも思わないし、殴るなどの暴力に関しても元々筋力の少ない女性から肩をぶつけられた所で痛くもないし、万が一ケガをしても回復魔術を使えばいいだけなので何の問題も無い。


 ただ、物を隠されたりとか捨てられたり壊されたりされたりした場合は別でしっかりと躾はさせてもらうつもりではある。


 こればっかりは金銭的なダメージを受ける事になり、そのダメージに関しては俺の魔術ではどうにもできないからである。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る