第98話 決心
「一面凛樹尽くしじゃないか!!」
各メディアの最大ニュースとして取り上げられる妹を見て、歓喜と同時に危機感を持つ。
俺の妹は世界一可愛い。
そんな妹が大衆に晒される。
そんな現状は有象無象が世界一可愛い妹に群がる要因となる。
俺の妹は誰にも渡さない。
そんな信念の元生きる俺にとって、それは許し難いものだった。
「近寄る奴は全員ぶっ潰す…」
行き過ぎたシスコンを発揮する光。
「今日は随分とやる気らしいな…」
アルティメーターとの訓練にも力が入る。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「なんじゃぁ…こりゃ?」
武生院からバイクを走らせ、百道のプリンに戻るとそこにはカメラやマイクを掲げる大群衆。
「なんでぇこがん大繁盛なんじゃぁ?」
よく分からない状況に首を掲げながらバイクを裏口につけていた時、
「アナタ、『百道のプリン』の関係者ね!!少し話しを聞かせてくれませんか!?」
マイク片手にグイグイ来る女がカメラと共に俺に近づいて来た。
「…なんぼ払うてくれるんじゃ?」
そう女に俺は睨みつける様に言う。
「えっ!?」
「えっ!?じゃねぇじゃろ。俺ぇの時間使ぉとるんじゃ、なんぼ払うんか先に言ぅんが道理じゃろうが。」
右手でマネーマークを作りながらそう更に睨む。
「えぇぇ…」
「ええ子ちゃんにゃぁ分からんかのぉ…世の中銭か力じゃけぇ。銭も力もないんじゃお断りじゃ。」
そう言って裏口から入り鍵を掛けた。
「マジで何が起こっとんじゃろ?よう分からんと言ったけど…まあええよね?」
翌朝、報道番組で報道陣をカツアゲする店員としてモザイク付きで報道された。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「待ちなさい、少し話があるわ。」
下校途中、駅に向かう私の肩を掴む手と言葉。
「…き、今日お金持ってません…」
私は怯えながらそう返した。
「だからヒーローの私がカツアゲするわけないって言ってんでしょうがっ!!アンタそれわざとでしょ!!」
クリスティン・メイトリクスさんに怒鳴られ、泣きそうになった。
「よく聞きなさい。アンタは私の次くらいに可愛いし美人だわ。それに私の次くらいには優秀だし私の次くらいには人望も人気もある。」
消えて無くなりたい気分の私の横でクリスティンさんはそう力説する。
「要するに、アンタは私の次くらいには誇っていい存在なの。…聴いてる?」
「…はい、聴いてます。…メイトリクスさんは凄いです…」
そう恐る恐る返す。
「全然聴いてないじゃない!!私が言いたいのは―だからカツアゲじゃないって言ってんでしょうが!!財布を出すんじゃないわよ!!」
何故かクリスティンさんの怒りを買ってしまった。
「だから!!アンタは私の次くらいには自分を誇っていい…いや、誇らなきゃダメなの!!優れた存在は優れたことを誇り、その才能を世界に還元する義務があるの!!この私が認めてあげたのよ!!その義務を果たしなさい!!」
「ごめんなさい…これで勘弁して下さい…」
威圧的に捲し立てる彼女に、私は泣きながら再び財布を差し出した。
「だからカツアゲじゃないって言ってんでしょうが!!あぁあっ!!もう!!なんて言えば伝わるのよ!!このクソ陰キャ!!」
苛立った彼女にビクッと身を震わせながら改札を潜る。
陽キャ怖い…
「…陰キャでごめんなさい…生きててごめんなさい…」
そう言って電車に飛び乗った。
「ちょっと!!待ちなさいよ!!」
閉まる電車の扉越しに怒鳴るクリスティンさんを嘲笑う様に電車は発車する。
そんな彼女をガラス越しに見送りながら思う。
明日学校行きたくないなぁ…
とはいえ、学校をサボるという発想は私には出来ない。
お金、少し多めに持っていった方がいいよね…
コツコツと貯めたお小遣いの詰まったお気に入りだった陶器のペンギン貯金箱を泣きながらハンマーで破壊した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます