第50話 主婦の戦い
「モフ白は武生院で面倒見るよ、姉さん。」
そう神也叔父さんが言う。ボコボコにされたおじいちゃんを背負いながら。
「週一でこっちに寄越せ、氷華の遊び相手だからな。経費はオメェが持てよ。」
そんな神也叔父さんを恫喝する我らがママ。
「相変わらず横暴だ…」
「なんか言ったか?」
そう呟く叔父さんにママは元ヤンモードで言う。
「ごめん、姉さん…なんでもないです…」
私と氷華の我儘が原因とはいえ、叔父さんが不憫になってくる。
「叔父さんありがと〜!!」
とりあえず一件落着した後、私は叔父さんに感謝を伝えるべく抱き着く。
「可愛い姪っ子たちの為だし、別にいいよ。」
そう素っ気なく言う叔父さんはやんわりと私を引き剥がす。
「ところで凛樹、そういうこと誰でもやってないよね?」
そう叔父さんが真剣な顔で言う。
「アハハ、偶にしかやってないよ~。」
そう答えた私は、何故か叔父さんからお説教を受けた。
解せぬ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「速い…能力だけなら反則レベルね!!」
そう言いながら俺の速度に対応するレインボークリス。
「そりゃあオメェも同じだろ!!」
7つの能力を使う相手にそう言い返す。
速さと単純な破壊力なら負けないのだが、相手は伊達に世界的ヒーローではない、匠に能力を駆使し、俺の位置を察知し、経験と感覚で躱し攻撃を操り出す。
どちらも有効打を与えられず、千日手、無効試合同然の無駄な時間、どちらかが参ったというのを待つ根競べとなっていた。
「まだやんのか?」
「アンタこそ、さっさと降参したら?」
そう睨み合う俺たち。
一歩踏み出した俺に、グゥゥーーー!!とどデカイ腹の虫が鳴く音が聞こえた。
「お腹空いた…」
先程まで鎬を削っていた相手が間抜けに蹲っていた。
「アホらし…帰るか…」
呆れた俺は武生院に戻るべく回れ右をする。
「ぅぅ~…卑怯者ぉ~!!なんか食べさせろよ~!!」
アホの相手はせんぞ!!と不退転の意志で歩みを進める。
「困ってる人を見捨てるの?ヒーローの風上にもおけない奴!!」
いや、全部お前の責任だろ!!
余りにも都合のいいことを言うバカ女に俺は怒鳴りそうになるがそれを堪え、無視して歩く。
「バカァ!!凛樹は優しかったのに〜!!」
バカ女から世界一可愛い妹の名が出たことで思わず振り向いた。
「俺の妹とどういう関係だぁ!!」
ズンズンとバカ女に歩み寄る。
「ふふっ…聞きたいなら牛丼を奢ってもらおうか…」
そう笑うバカ女。
牛丼だと…
安いな…
そう思いバカ女を抱えて近所の牛丼チェーンに駆け込んだ。
一杯だけだと思っていた俺は、数分後酷く後悔することになった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「臨時休業…?」
殺気全開で言うお嬢。
「へい…なんでも、トップヒーローとレッドランクのヴィランの戦闘中だそうで…」
お嬢に俺たちが見たことを伝える。
お嬢に頼まれた買い物をすべく武生院門下生総員で駆け付けたカトーヨーカドーは、何故かNo.4ヒーロー、『スケルトンマン』と
一般市民を守りながら戦うヒーローは不利で、増援が駆け付けても、上手く一般市民を人質にしながら戦うカンキツに劣勢だった。
そんな危険な状態で営業するわけにも行かず、カトーヨーカドーは致し方無く営業中止を宣言し、セールに駆け付けた主婦たちは暴徒と化した。
ヒーローとヴィラン、そして主婦が暴れる駐車場。
正しく地獄絵図であった。
「とりあえず、〆てくる。」
俺の話を聞いたお嬢はそう言って姿を消した。
数分後、臨時ニュースとして全国区で放送される速報で、激戦中の筈のスケルトンマンとカンキツが土下座する姿が放送された。
その前に立つ人物は足元しか映されなかったが、間違いなくお嬢だ。
その数分後、満面の笑みでパンパンに詰め込まれた買い物袋を両手いっぱいに提げて帰って来たお嬢。
「奢りはいいなぁ!!」
買い物袋に所々赤いシミがついていることに誰も触れなかった。
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