第51話 ヒーローと最強の生物
「クソっ!!」
思わず悪態つくNo.4ヒーロー、スケルトンマン。
突然セール中のスーパー、カトーヨーカドーに現れたヴィラン、カンキツ。
そんな凶悪犯がセールに駆け付けた主婦たちを人質に大規模な戦闘を挑んできた。
しかし、その快進撃もすぐに止まる。
雑魚と呼べる手下は容易だったが、大物ヴィランの配下、それなりから上級ランクのヒーローに匹敵する練度を誇る手練が現れ、相棒たちが釘付けになる。
なんとか俺1人辿り着いたカンキツの前には、奴の複数の配下に人質となった人々。
「漸くお出ましだなヒーロー!!しかし、一歩でも動けば人質が死ぬぞ?勿論、お前の相棒共が動いてもな!!」
愉快そうに笑うカンキツと怯える人質たち。
「さあ、お前の相棒に命じろ、戦闘を止めろと!!」
意気揚々と笑うカンキツ。
ヒーローとして最大の責務、それは民間人の保護。その要求に従うしかなかった。
「お前の相棒が無惨に死に絶える…その声だけ聞いていろ!!」
戦闘中止を命じた俺にそう笑うカンキツ。
しかし、耳につけた通信機から聞こえる音はなかった。
それはカンキツも同じだったのか、奴に少しの動揺が見えた。
仕掛けるか…いや、俺1人では人質全員を救出し戦いに持ち込むには速度が足りない。
だが、今しか動くタイミングはない!!
そう思うよりも早く、人質をとっていたヴィランたちが突然意識を失い倒れた。
「えっ!?」
カンキツがそう驚愕の声を漏らすと同時だった。
奴の身体が空中で一回転し、地面に叩きつけられた。
「おい…テメェのせいで、お一人様一品限りのセール品が買えなかったじゃねぇか…」
レッドランクの大物ヴィランの頭を踏み付け、そうドスの効いた声で言う黒髪の美女。
その姿にヒーローになったばかりの研修で教わった、絶対に戦ってはいけない相手を思い出した。
『武生神娘』史上最強の無能力者にして、最強の生物。笑い話程度に思っていた存在がそこにいた。
「おい、オメェもだ…ヒーローなら主婦の生活も考えろや!!」
地面に顔面から叩きつけられ、漸く気付く。殴られたのだと。
人の認識を超えた速度で殴られた俺は、強烈なビンタで起こされ、敵だったカンキツと共に土下座していた。
そんなシーンが中継されていたと知るのは、ヴィランと共に彼女がセールで目的だった品を別のスーパーで買わされ、深いトラウマを負って帰宅した後になる。
俺、要らないんじゃないかな…
No.4まで登り詰め、ヒーローとしての将来が確約されていると思い込んでいた。
複数の袋にパンパンに詰まったお目当ての品をホクホクとした笑顔で両手に提げて帰った最強の生物『武生神娘』の姿に、引退の文字が頭を過ぎった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます