第8話 百道家の男衆は辛いよ
「乱鶯…服が汚れっちまったよ…」
返り血で真っ赤に染まった妻がニヤリと笑いながらそう言う。
「そ、それは大変だ!直ぐに着替えないと…き、綺麗な神娘さんには、綺麗な服が一番ですからね!!…あ!!そ、そうだ、せっかく今日の服は似合っていたのに…なんてことするんだ!!許せませんね、こいつら!!ね、神娘さん!!」
多分棒読みになっているだろう。それに言っている途中で、今日の服装を褒めていなかったことを思い出し、慌てて言ってしまったが、火に油を注いだ気がしてならない。
ユラッ…と蜃気楼の様に姿を消した神娘は、
「着替えるついでに、ちょっと話そうや…乱鶯…」
僕の背後に立ち、そう耳元で囁く。
血の匂いがした。
「はい…」
首根っこを掴み、僕を引き摺る妻にそう返すことしか出来なかった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「俺の妹になにしとんじゃコラァッ!!」
妹につく虫を払うべく、光の速さで登場した俺。
「もう復活したんだ…」
溜息を漏らす凛樹。
「いや、死ぬ程痛ぇ。痛ぇが、虫を払うくらいなら出来る。」
キリッ、と格好つけて言う俺を凛樹は虫を見る様な目で見る。
「頼んでないんだけど?正直キモいんだけど、お兄。」
そう言って去って行く。
あれぇ、おかしいな?今のは決まったと思ったんだが?
何故だろう、目から塩水が…
「凛樹!!嘘だろ!!お兄ちゃんのどこがキモいのんだ!!」
「そういうとこ。」
その返答に心が折れた。
「凛樹ー!!待ってくれ!!お兄ちゃん直すから!!嫌いにならないでくれーっ!!」
悲痛な叫びと同時に、アドレナリンの過剰分泌で誤魔化されていた全身の痛みが蘇ってくる。
「ちくしょー!!痛ぇーっ!!あのクソババア!!俺と凛樹の仲を裂きやがって!!」
あれもそれも、全部あの母親のせいだ!!
そんな責任転嫁をしながら、身体と心の痛みに震えていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
「お兄ちゃん!!」
僕の姿を見つけた氷華が駆け寄って来て、抱き着く。
「怖かった…」
そう泣きながら弱々しく言う妹の頭を撫でる。
怖いのはお前だよ。
なんで全部凍らせちゃうの?
あまりにも容赦ない能力の行使に、我が妹ながら恐ろしくなる。
なんでこんな子になっちゃったんだろう…
…母さんの娘だからしょうがないよね!!
ヤケクソな答えしか出てこない。
「氷華、家に連絡したかい…?」
僕の問いに、氷華はビクッ!と震える。
「ダメ!!ママに殺される!!」
「うん、そういう認識なら、もっと上手に能力を使おうね。」
未熟ながらも、力関係だけはしっかりと叩き込まれた妹にそう言って再度頭を撫でる。
「学校では、友だちを凍らせたらダメだからね。」
「大丈夫、友だちいないから。」
自信満々に答える妹に、不安しかなかった。
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