第3話 嫁が強過ぎる

 底辺ヒーロー『プディングマン』、それが僕なのだが、世間一般からの知名度はほぼゼロで、小さなプリン屋の店長としての姿の方がまだ有名である。

 そんな僕は、ヒーロー協会から『プディングマンの妻』の夫として認知されている。

 ヒーローでもヴィランでもない一般人である筈の我が妻は、ヒーロー協会、ヴィランリーグからも最も警戒され、恐れられている。

 そんな妻は時折、その恐ろしさを知らない…信じない新人ヒーローや名を売りたいヴィランに襲われることがある。

 もう、何が正義で何が悪か分からない現象である。


 そして、今日もそんな命知らずな無謀者が襲来したが、指先一つで空の彼方に消えていった。

 もう、彼女一人いればヒーローは全員御役御免でいいんじゃないか?

 あまりにも圧倒的な強さを誇る妻の、頼もしい後ろ姿を店内から見ながら、そんなことを毎度思っていた。



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 プディングマンこと、僕百道ももち乱鶯らんおうは、響きだけなら強そうに聞こえる。

 そんな僕の家族は、長男で高校2年生のひかり、中学3年生の長女凛樹りんじゅに小学6年生の次男岩穿がんてつ、小学1年生の次女氷華ひょうかの4人の子と、妻である神娘みこの6人家族だ。


 そんな僕の家族は、妻を除き、全員能力者であり、4人の子は皆、恵まれた能力を持っており、長男の光に到っては、既にトップヒーローの地位が約束されている。

 そんな優秀な子たちを羨ましくも誇りに思うと同時に、それが妻の遺伝子的な強さの現れなのではないかと思っている。


 今は結婚して百道神娘だが、彼女の旧姓は武生たけふ

 そして、彼女の実家は武生院と呼ばれる、ヒーローたちも学びにくる徒手格闘術、武生流武術の総本山。

 そんな武生院の現宗家当主、歴代最強にして武神と恐れられる稀代の武術家、武生紅雪こうせつの長女であり、父を超える武術家で、次期当主となる筈だったのが神娘だ。

 しかし、彼女は家業を弟に丸投げし、僕の元に来た。

 今でこそ武生院とは仲良くやれているが、結婚当時は生きた心地がしない程に、毎日命を狙われていた。


 そんな妻の強さは衰えるどころか、日々強くなっており、底が知れない。

 というより、そもそも、なんで無能力者である神娘が瞬間移動したり、ビームを撃ったり出来るのかが分からない。

 しかし、今年で結婚生活18年、そんなことを気にすることはなくなっていた。


 今最も気になるのは…


「クソガキがぁ!!この程度で寝てんじゃねぇぞ!!」

 妻に鍛え直されている息子が、何日学校を休まなければならないのかということだ。









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