第15話 私だけが悪いのではない
◆
今までの人生史上一番緊張したと言っても過言ではないとても濃い一日が終わった後、緊張感が一気に抜け落ちてしまい何もやる気が起きず数日はベッドの上でゴロゴロしていた。
あの日誓った、もし若返る事が出来たのならばいろんな事を後悔しないように生きていきたいという思いは頭の片隅に追いやり、だけれども完全に追いやる事は出来ずに、何かをやらなければという思いにぢりぢりと地味に精神を削られながら実に怠惰な日々を過ごしていた。
この日々を例えるのならば宿題に全く手を付けていない夏休みの真っただ中、であろうか。
宿題をやらなければという気持ちはあるものの、まだ夏休みは半分あるのだから余裕だとみて見ぬふりをするあの感じ。
正にそれである。
しかしながら私だけが悪いのではないと言わせて頂きたい。
それもこれも全て私が皇女殿下様であるとあれやこれやといたせり尽くせりなのが悪いのである。
そもそも、人間なんてそう簡単に変わる事が出来たのならばこの歳になるまでに変われていたはずなのだ。
にも関わらずそんな人間にこんな、どこぞの王族かよというような扱いをすればどうなるのか火を見るより明らかではないか。
まぁ、王族というか今の私は唯一の皇族らしいのだけれども。
そう、皇族だから怠惰な日々を過ごしていても良いのである。
私は何も悪くない。
そう、何度目かになる自問自答を繰り返しながらベッドでゴロゴロしていたその時、少し乱暴なノックが私の部屋の扉から聞こえてくる。
そのノックをした相手に入室を許可すると、「失礼しますっ!」と怒気を孕んだ声音で執事姿のイプシロンが怒りを隠す素振りも無く入室してくると、いつもはスマートな歩き方ではなく肩を怒らせて大股で私の所へと歩いてくるではないか。
やべー、流石にだらけすぎたかしら?
何だかんだで女皇帝、この国のトップだもんね。
何もしないでだらだらできる訳が無いではないか。
少し考えれば分かる事であるのに何故その事を思い至る事が出来なかったのか。
だらけ切っていた今までの私の腹を全力で殴ってやりたい気分である。
「ど、どどど、どうしたというのだ?お前ともいう者が、感情が駄々洩れではないか」
少しだけどもってしまったのだが許容範囲内であろう。
皇女殿下としての威厳が損なわれていないと思いたい。
「すみません、私としたことが。しかしながら、この怒り、抑えようとも抑えれる物では到底ございませんっ!!」
「ひぃぃぃいいいっっ!?」
あまりの迫力に思わず仰け反ってしまったのは致し方ないだろう。
イプシロンが怖すぎるのが悪い。
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